仏教のお経の中で特に有名な般若心経とは、仏教の神髄を説いているともいわれるお経で、多くの宗派で唱えられています。
般若心経はリズミカルで覚えやすいことでも知られており、テキストや動画を使って目と耳で確認することで、誰でも習得できるお経です。
般若心経には多くのメリットがあるため、本記事では、般若心経の歴史や意味をはじめ、気をつけるべき注意点についても解説します。
般若心経を覚えるために便利なふりがな付きの全文ダウンロード用のPDFをご用意し、おすすめの動画や写経もご紹介していますので、どうぞ参考になさってください。
目次
般若心経とは?
はじめに般若心経について、起源や歴史、お経の特徴などの基礎知識を解説します。
そもそも般若心経とは?
仏教で唱えるお経の種類一覧表
宗派 | 般若心経 | そのほかのお経 |
天台宗 | 〇 | 法華経・自我偈(じかげ)・観音経など |
真言宗 | 〇 | 大日経・金剛頂経など |
臨済宗 | 〇 | 観音経・開経偈(かいきょうげ)・大悲呪・坐禅和讃など |
曹洞宗 | 〇 | |
浄土宗 | 〇 | 阿弥陀経・観無量寿経・無量寿経・正信念仏偈(正信偈)など |
浄土真宗 | × | 無量寿経・観無量寿経・阿弥陀経・正信念仏偈(正信偈)など |
日蓮宗 | × | 法華経・南無妙法蓮華経 |
般若心経とは、般若波羅蜜多心経(はんにゃはらみったしんぎょう)や、心経とも呼ばれるお経の名称です。
天台宗・真言宗・臨済宗・曹洞宗といった古くからある在来仏教をはじめ、法相宗・禅宗などの宗派の葬儀や法要のご供養で共通して唱えられており、お経を書き写す写経で用いられるケースも多いです。
一般的に、浄土宗の葬儀や法要では般若心経を唱えませんが、祈願や毎日のお勤めで読経する場合があります。
般若心経の歴史
般若心経の起源は、4世紀末にまで遡ります。仏教僧・鳩摩羅什(くまらじゅう)がシルクロードを経てインドから中国へ渡り、サンスクリット語(梵字)で記された経典を漢語に翻訳したことが、その始まりとされています。
鳩摩羅什とは、西遊記で知られる最初の三蔵法師(三蔵法師とは「高僧」を意味する言葉です)です。現在まで受け継がれている般若心経は、のちに三蔵法師となる玄奘(げんじょう)が訂正を加えたといわれているものです。
玄奘は唐の時代に、大乗仏教の基礎的な教義を「大般若波羅蜜多経」(通称「大般若経」)として、16部600巻に及ぶ膨大な経典にまとめました。
般若心経はわずか262文字しかない短文の経典ですが、仏教の核心ともいえる真理を簡潔に伝える経典として重宝され、日本では奈良時代から約1,300年にわたって親しまれているといわれています。
般若心経を唱えるメリット
般若心経は短くリズミカルで覚えやすいお経としても知られています。般若心経を読経することには次のような4つのメリットがあります。
- 亡くなった人の冥福を祈り供養できる
- 功徳を得られ善を積むことができる
- 仏様の教えに触れることができる
- 心身がリラックスして落ち着く
亡くなった人の冥福を祈り供養できる
仏教の多くの宗派では、般若心経などの読経による供養が故人を極楽浄土へと導く手助けになると考えられています。
そのため、人が亡くなると僧侶を呼び、故人のご遺体の傍で般若心経を唱えたり、お通夜や葬儀の儀式、火葬時に般若心経を唱えたりすることが一般的です。
さらに、葬儀後の法事・法要においても般若心経を唱えることが多く、参列者も合掌をして故人の冥福を祈ります。
功徳を得られ善を積むことができる
仏教では、般若心経などのお経を読んだり聴いたりすることにより、功徳(くどく)を得られ善を積むことができると考えられており、写経にも同様の意味があるとされています。
功徳とは、世のため人のためになる行いのことをいい、お仏壇やお墓へ手を合わせて、ご先祖様や故人の供養をすることも功徳につながります。
仏様の教えに触れることができる
般若心経などのお経には、仏様の知恵が詰まっているため、仏教の教えに触れることができますす。
宗派によっては般若心経を唱えない場合もありますが、仏様の教えに触れる機会としてお経を大切にしているのは、すべての宗派に共通しています。
心身がリラックスして落ち着く
般若心経は、故人を供養するだけでなく、遺族の心を癒やすお経でもあります。その一定のリズムは心地よいリラックス効果をもたらしもたらし、暗唱することで歌を口ずさむように、自分自身の心身を落ち着かせることができます。
お経の暗唱は、記憶力の向上や脳の活性化にも効果があるとされています。特に般若心経は、子どもからお年寄りまで誰でも手軽に自宅で唱えることができるため、生活習慣に取り入れるとよいのではないでしょうか。
般若心経で気をつけるべき注意点
般若心経には多くのメリットがある一方で、気をつけなければならない次の2つの注意点もあるため、あらかじめ把握しておきましょう。
- 仏教には般若心経を唱えない宗派がある
- 般若心経を唱えてはいけないという迷信がある
仏教には般若心経を唱えない宗派がある
般若心経は、天台宗、真言宗、曹洞宗、臨済宗、浄土宗など多くの宗派で読まれていますが、浄土真宗や日蓮宗では唱えないためご注意ください。
最新の調査結果によると、浄土真宗の信者数は、浄土真宗本願寺派と真宗大谷派を合わせて約1,460万人と、仏教で最も多い傾向にあります。
浄土真宗では「南無阿弥陀仏」、日蓮宗では「南無妙法蓮華経」と唱えるお経をそれぞれ大切にしています。
個人的に自宅で唱えることは問題ありませんが、お付き合いのあるお寺がある檀家の方や、葬儀や法要を営む宗家にとっては、ほかの宗派のお経となる般若心経に不快を感じる方もいらっしゃるため気をつけましょう。
般若心経を唱えてはいけないという迷信がある
般若心経に関して、「霊が寄ってくる」「不吉なことが起こる」「お坊さんではない一般人がお経を唱えてはいけない」といった話を耳にすることがありますが、これらの話は迷信だといわれています。
般若心経のふりがな付き全文
般若心経のふりがな付き全文を、コピーペーストして使えるテキストと、ダウンロードして印刷できるPDFの両方でご用意しました。用途に応じて、お好みの形式をご活用ください。
般若心経のふりがな付き全文
摩訶般若波羅蜜多心経
観自在菩薩
行深般若波羅蜜多時
照見五蘊皆空
度一切苦厄
舎利子
色不異空
空不異色
色即是空
空即是色
受想行識亦復如是
舎利子
是諸法空相
不生不滅
不垢不浄
不増不減
是故空中
無色
無受想行識
無眼耳鼻舌身意
無色声香味触法
無眼界乃至無意識界
無無明
亦無無明尽
乃至無老死
亦無老死尽
無苦集滅道
無智亦無得
以無所得故
菩提薩埵
依般若波羅蜜多故
心無罣礙
無罣礙故
無有恐怖
遠離一切顛倒夢想
究竟涅槃
三世諸仏
依般若波羅蜜多故
得阿耨多羅三藐三菩提
故知般若波羅蜜多
是大神呪
是大明呪
是無上呪
是無等等呪
能除一切苦
真実不虚
故説般若波羅蜜多呪
即説呪曰
羯諦羯諦
波羅羯諦
波羅僧羯諦
菩提薩婆訶
般若心経
般若心経の横書きPDFダウンロード
般若心経のふりがな付き横書きのPDFをご用意しましたので、印刷したい方は以下よりダウンロードしてご利用ください。
般若心経の縦書きPDFダウンロード
般若心経のふりがな付き縦書きのPDFもご用意しましたので、お好みに合わせてご活用ください。
般若心経の意味
般若心経は「智慧の完成」や「完全なる智慧」を意味するお経で、悟りの境地に至るための仏教の教えです。
お経の中には「色即是空 空即是色(しきそくぜくう くうそうぜしき)」という対を成す有名な仏教用語が含まれており、まさにこの言葉への理解の必要性を問うお経とも言えます。
- 色即是空:この世のすべての事物や現象には実体がなく本質は空(くう)である
- 空即是色:すべてのものは因縁によって生じているため存在する
色即是空と空即是色にはそれぞれ上記のような意味合いがあり、空とは存在しないということではなく、すべてが相互依存し、固有の現実を持たないということを表しています。
つまり、何事に対しても執着をしないことで、周りの環境や他者の評価に左右されることなく、心の安定を取り戻せたり、苦しみから解放される道が開かれたりするという意味です。
末尾の「ギャーテー、ギャーテー、ハーラーギャーテー、ハラソーギャーテー、ボージーソワカ」は、悟りに至るための真言(マントラ)となる呪文にあたります。
漢文で「羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶」と書きますが、まさに悟りの極意を象徴しているお経と言えるでしょう。
般若心経のおすすめ動画
般若心経を覚える際、とくに真言宗では読み方や発音に違いがあるため、気になる方はご自身の宗派の動画を参考にして覚えることをおすすめします。
おすすめの3つの般若心経の動画をご紹介しますので、どうぞご覧ください。
天台宗(天台宗務庁)
天台宗務庁が紹介している全文ふりがな付きの般若心経の動画で、開経偈(かいきょうげ)・宝号・回向文のお経の読み方についても学ぶことができます。
真言宗(高野山 遍照尊院)
真言宗の高野山 遍照尊院が紹介している全文ふりがな付きの般若心経の動画です。
曹洞宗(全国曹洞宗青年会【公式】)
全国曹洞宗青年会の公式サイトがご紹介している全文ふりがな付きの般若心経の動画です。
般若心経は写経にも最適
仏教の各宗派の本山にあたる寺院では、写経や座禅などの修行を体験できます。写経では般若心経が用いられるケースも多くあります。
日程が限られている場合もありますが、予約不要で毎日受け付けているお寺もあるため、お近くにお住まいの方や観光などで訪れたときは体験してみるのもおすすめです。
写経は、美しい文字を書きたい方や心身の浄化を体験したい方、新しい趣味を見つけたい方におすすめです。
般若心経の写経用PDFダウンロード
般若心経の写経に最適なPDFをご紹介しますので、印刷してご利用ください。
筆ペンなどで文字をなぞって使えるタイプや、用紙を重ねて使うタイプなど、さまざまなタイプの写経が掲載されています。
般若心経についてよくある質問
般若心経についてよくある質問をまとめてご紹介しますので、気になる項目があればどうぞ参考になさってください。
般若心経の覚え方は?
般若心経を覚えるためには、ふりがな付きのテキストや動画を見ながら唱える方法や、定期的に写経をする方法が有効です。
毎日数回繰り返して習慣にすることで親しみやすくなり、葬儀や法要に参列した際には、心の中で僧侶に合わせて般若心経を唱えられるようになるでしょう。
般若心経の「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」と「摩訶般若波羅蜜多心経」の違いは?
般若心経では、冒頭の「摩訶般若波羅蜜多心経」の部分が「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」の場合もあり、仏説という言葉が付くかどうかは宗派によって異なります。
仏説が付くのは真言宗で、天台宗・曹洞宗・臨済宗・浄土宗・黄檗宗などでは付きません。
般若心経の息継ぎはどこでするの?
句読点がなく一定のリズムで流れる般若心経は、どこで息継ぎ行っても構いませんが、音読するよりもお経のリズムが狂わないことが最優先です。
動画に合わせて何度も繰り返して暗唱すると、自分に適した息継ぎのポイントやコツを掴みやすくなります。
仏教の宗派別による葬儀の流れや作法の違いは?
以下の記事では、宗旨・宗派ごとの葬儀の特徴をご紹介しています。それぞれの宗旨・宗派の基礎知識・流れ・マナーをわかりやすく解説していますので、ぜひご参照ください。
般若心経はメリットが多くて親しみやすいお経!葬儀や法要の読経は北のお葬式へ
般若心経の意味や歴史、メリット、注意点をご紹介し、おすすめの動画や、写経・暗唱に最適なふりがな付きの全文やPDFをご用意しました。本記事をまとめると、次のとおりです。
- 般若心経は、天台宗・真言宗・臨済宗・曹洞宗・浄土宗など、多くの仏教の宗派で唱えられている有名なお経で、わずか262文字しかないため暗唱しやすい。
- 般若心経には、亡くなった方の冥福を祈り供養できること、功徳を得て善を積めること、仏様の教えに触れられること、心身がリラックスして落ち着くことの4つのメリットがある。
- 般若心経には2つの注意点があり、浄土真宗と日蓮宗では唱えないことと、般若心経を唱えてはいけないという迷信に惑わされないように気をつける。
- 般若心経には、「浄土真宗と日蓮宗では唱えない」「般若心経を唱えてはいけないという迷信が存在する」という、2つの注意点がある。
- 般若心経は仏様の核心ともいえる教えを説いたお経のため、その神秘に魅了される方も多い。
北のお葬式では、お付き合いをしているお寺がない方でも、ご要望に合わせて葬儀や法要で般若心経などのお経を唱えてもえるお坊さんをご紹介しています。
参考:北のお坊さん
安い費用で戒名も授かることができ、後々のお付き合いの必要性や檀家料のお支払いの義務もありませんので、どうぞお気軽にご依頼ください。