喪中は似たような言葉の「忌中」と混同しやすく、「喪中」と「忌中」の具体的な違いを問われるとよく分からない方もいらっしゃるでしょう。
そこで、喪中と忌中の違いや、それぞれの期間、喪中の対象範囲となる親戚は誰にあたるのか、図解付きで分かりやすく解説します。
また、喪中にやってはいけない4つのことや、喪中はがきを用意する習慣についても解説しますので、親戚や周囲から非常識と思われないよう、正しい知識を学んでマナーを守りましょう。
目次
喪中とは?
本章でははじめに喪中の意味を解説し、続けて具体的な期間や誰が対象になるのかといった、喪中に関して知っておきたい知識を分かりやすく解説します。
- 喪中の意味
- 喪中の期間
- 喪中の対象範囲
喪中の意味
喪中とは、家族や親族が亡くなった際、喪に服して行動を慎むべき期間のことをいいます。
故人を偲び、供養を重視する期間であるとともに、喪中は故人を失った悲しみを背負う方にとって、自分自身に対する癒しの期間でもあります。
また、喪中にはしてはいけないこともあり、マナー違反は身内や周囲から「常識がない人」とみなされやすいため、正しい知識を習得して、慎ましく暮らすことが最良といえるでしょう。
喪中の期間
喪中の期間は、一般的に故人が亡くなってから1年間です。基本的には、一周忌法要が終わるまでの時期を喪中といいます。
本来、一周忌法要は故人の亡くなった命日に執り行いますが、家族や親族の集まりやすさを加味して、命日を迎えるまでの日程で、前倒しをして営むケースが多い傾向にあります。
なお、現在は喪中に関する法律は存在しませんが、かつては服忌令(ぶっきりょう)と呼ばれる法令によって、喪に服すべき日数が故人との続柄に応じて定められていました。
服忌令は、犬や動物の殺生を禁ずることで知られる『生類憐れみの令』を制定した江戸幕府の第五代将軍・徳川綱吉によって、1684(貞享元)年に発令されます。
その後、5度にわたって追加補充され、1947(昭和22)年に廃止されましたが、古くからのしきたりを大切にする日本では、喪中期間に自粛することが風習として強く根付いています。
喪中の対象範囲
- 0親等:配偶者
- 1親等:父母・義父母・子ども
- 2親等:兄弟姉妹・祖父母・義祖父母・孫・兄弟姉妹の配偶者・義兄弟姉妹・義兄弟姉妹の配偶者
喪中となる対象範囲は、上記のように一般的には、亡くなった故人からみて2親等以内となっており、配偶者となる姻族を含みます。
ただし、伯父・伯母(叔父・叔母)や甥・姪は3親等、従兄弟・従姉妹は4親等にあたりますが、3親等以降でも喪に服したらいけないというわけではありません。
お付き合いのある親族や内縁関係にある方などが亡くなったときに喪中とみなす場合はよくあり、とくに喪中はがきでは、年賀欠礼はがきを用意するケースが多いです。
なお、親族の範囲は、血縁関係や婚姻関係においての繋がりのある方のことをいい、民法では6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のことをいいます。
出典:親族図 民法第725条(厚生労働省)
喪中と忌中との違い
言葉 | 宗教 | 喪に服す期間 | 目的 |
喪中 | 仏教・神道 | 一周忌法要まで | 故人の追悼と自分自身への癒し |
忌中 | 仏教 | 四十九日法要まで | 故人の成仏を祈る |
神道 | 五十日祭まで | 故人に家の守り神になってもらい死の穢れを移さない |
喪中とよく似た言葉で忌中という言葉がありますが、喪中と忌中の違いは、対象となる法要の種類にあり、喪に服す期間が異なります。
忌中とは、忌明けを迎えるまでの期間のことをいい、仏教では亡くなった日を含めて49日目の四十九日法要、神道では50日目にあたる五十日祭を執り行うまでの時期です。
四十九日法要は七七忌とも呼ばれていますが、本来、忌中は仏教なら7日ごとに7回、神道では10日ごとに5回、僧侶や神職を招いて手堅く供養するのが正式な過ごし方となります。
初回の初七日法要や十日祭を葬儀当日に繰り上げ、四十九日法要や五十日祭までの儀式は省略するご家庭も多いと思いますが、忌中はご自宅での供養を重んじましょう。
なお、仏教の忌中から四十九日までの法要は、基本的に冥土を彷徨った故人が無事に三途の川を渡って極楽浄土へとたどり着き、成仏できるように祈ることが通例となっています。
また、神道では、故人の魂に家の守り神となってもらうために祈るとともに、死に寄り付く邪気を穢れとみなして、他人に移らないように外部との接触を断つのがマナーです。
このような背景から、四十九日法要や五十日祭までの忌中は、ご家庭で故人を偲び、しっかりと供養に専念することが好ましいといえるでしょう。
喪中にやってはいけない4つのこと
喪中や忌中には、やってはいけない4つのことがあるため、詳しく解説します。
事柄 | 忌中 | 喪中 |
お正月の祝い事 | × | × |
神社への初詣や参拝 | × | △ |
お祝い事の開催や参加 | × | △ |
旅行 | × | △ |
①お正月の祝い事
年末が近づくとお正月に向けてさまざまな準備をする方が多いと思いますが、喪中や忌中の方は、次の4つのポイントを押さえて、おめでたいお正月を自粛して慎ましくすごましょう。
- 年賀状は送らない:喪中はがき・寒中見舞いを送付する
- お正月飾りをしない:門松や鏡餅などの装飾をしない
- おせち料理の食材や盛り付けに注意:紅白やおめでたい食材を避ける
- 新年の挨拶に注意:「あけましておめでとう」と言わずに「今年もよろしくお願いします」と言葉を選ぶ
なお、子どもや孫が楽しみにしているお正月のお年玉の授受は行っても構いません。赤色やおめでたい色柄のお年玉袋を避けると良いでしょう。
②神社への初詣や参拝
神社は神道の信仰に基づいた祭祀施設のため、忌中の期間は死の穢れを持ち込まないよう、初詣や参拝を避けることが基本です。
初詣やお宮参りや七五三などは、基本的に忌中を過ぎれば、喪中であっても鳥居をくぐり参拝をしても構いません。
ただし、地域や神社によっても考え方が異なるため、事前に該当の神社へ確認しておくと安心できるでしょう。
③お祝い事の開催や参加
結婚式や祝典、おめでたいパーティーなどへの参加は、忌中の期間は自粛することがマナーとなっています。
主宰者側の場合、周囲から反感を買う可能性があるため、できれば喪中の期間を避けて喪明けに開催するように日程調整することが理想です。
ただし結婚式は、両家の考え方や新郎新婦の精神状態、キャンセル料や延滞料の発生などの問題もあるため、身内でよく話し合って決定しましょう。
招待を受けた側では、あらかじめ主宰者の意向を確認しておくとトラブルを防ぎやすくなります。
④旅行
喪中の期間の旅行は避けた方が無難です。思わぬ事故やトラブルに巻き込まれた際、周囲から故人の不幸が災いになっていると考える方もいるため注意しましょう。
とくに忌中は、家族や親族をはじめ、周囲から強く反対されるケースも多く、故人を失った悲しみに嘆く方の立場を考慮して、自粛するのが無難です。
とはいえ、会社や学校の行事で欠席が難しい場合や、すでに予約をしていてキャンセル料の発生などの事情で中止しかねる場合もあるでしょう。
喪中の旅行は、家族や親族をはじめ、同行者へもきちんと相談して、後々までトラブルにならないように気をつけてください。
喪中にしても問題ないこと
喪中や忌中に行っても問題ないかどうか、迷いやすいことについてご紹介します。次の事項は、不幸があったご家庭でも問題なくできる習慣ですので、気にせずにいてください。
- 寺院への初詣や参拝
- お中元・お歳暮
- 暑中見舞い・残暑見舞い
- 会食や飲み会・イベントへの参加
- 遺品整理や引っ越し
寺院への初詣や参拝
寺院への初詣や参拝であれば、喪中や忌中の期間でも関係なく、いつ訪れても問題ありません。
仏教は神社とは異なり、死を穢れとみなさないため、例年どおりにお正月や寺院の行事へ参加しても構わないため、慣れ親しんだ寺院をご利用いただけます。
お中元・お歳暮
日頃お世話になっている方へ感謝の気持ちを伝えて贈るお中元やお歳暮は、季節の習わしであり、喪中とは無関係のため用意をしたり受け取ったりしても問題ありません。
ただし、お年賀は水引のない無地ののし紙を使用して、相手が目上の方なら「寒中御伺」、一般的には「寒中御見舞」「御挨拶」という表書きにしましょう。
暑中見舞い・残暑見舞い
暑中見舞いや残暑見舞いは、おめでたい挨拶をする年賀状とは異なり、季節の挨拶にあたるため、通年どおり授受しても問題ありませんが、華美ではないはがきや便箋を使用しましょう。
一方で、遺族の立場では死後間もない忌中は忙しいため、返信の手間を避けられるよう、「返信は不要です」と一言添える気遣いをおすすめします。
会食や飲み会・イベントへの参加
喪中はお祝い事を避ければ、自分自身のための会食や飲み会、コンサートやスポーツ観戦などの元気付けられるイベントへは参加しても問題ありません。
近年は誕生日も気にしない方が増えていますが、遺族や親しい方が悲しみを乗り越えるためには、気分転換することや友人・知人など周囲の方々による励ましを頼ることも大切です。
遺品整理や引っ越し
喪中や忌中は遺品整理や引っ越しを行っても問題なく、とくに故人が一人暮らしをしていた場合や引っ越しが必要な場合などは、死後早めに遺品整理をした方が良いでしょう。
死後はさまざま手続きや遺産相続で慌ただしく、期限のある手続きなども多いため、親戚トラブルにならないよう身内の承諾を得てから、早めに取り組むことをおすすめします。
喪中の服装
喪中の期間は、目立つ色合いや派手な服装は避け、黒・グレー・紺などの地味なカラーの服装を意識して着用するのが無難です。
ヘアカラーやネイルも落ち着いた色を選び、控えめで質素な服装は、周囲からも良識があるとみなされやすく、家族や親族とのトラブルも防げるでしょう。
また、喪中が過ぎても、法事・法要では少なくとも三回忌までは、きちんと喪服を着用して参列するのが一般的です。
喪中はがきの送り方
喪中に送る喪中はがきについて、送る時期や作成方法、喪中はがきを受け取った場合の対処法まで解説します。
喪中はがきの発送時期
喪中であることを知らせる喪中はがき(年賀欠礼はがき)を送る時期は、11月中旬から遅くとも12月初旬までがベストです。
郵便局では10月頃から販売されていますが、あまり早すぎると受取人が喪中であることを忘れてしまう可能性があり、逆に遅いと相手側が年賀状を準備してしまうため注意しましょう。
喪中はがきの作成で注意する7つのポイント
喪中はがきの作成にあたっては、次のように注意するべきポイントが7つあります。
- 薄墨を使用する
- 一文目で喪中であることを分かるようにする
- 続柄・名前・亡くなった月・年齢を明記する
- 最後に結びの挨拶を記載する
- 挨拶文は行頭の一字下げと句読点を使わない
- 文末に年月を記載する
- 差出人の住所と名前を記載する
近年は身内だけで執り行う家族葬が一般的となっていますが、葬儀へ参列できなかった方へも年末年始の挨拶の辞退と、誰がいつ亡くなったかをしっかりと伝えましょう。
なお、喪中はがきの作成は、郵便局やさまざまな企業でプリントサービスが提供されており、インターネットでの申し込みも可能です。早期割引があるため、ぜひ早めに検討しましょう。
出典:郵便局の喪中はがき(郵便局)
喪中はがきの準備が間に合わない場合の対処法
喪中はがきの発送が12月上旬までに間に合わない場合は、「寒中見舞い」という言葉を使用して、松の内が明けた1月8日から2月4日頃の立春までに届くように送付します。
さらに遅れて立春を過ぎてから送付する際は、春になってもまだ寒さが残っているという意味合いとなる「余寒見舞い」という言葉を使用しましょう。
喪中はがきを受け取った場合の対処法
喪中はがきを受け取った場合は、次の3つの対処法があります。
- 「寒中見舞い」として1月8日から2月4日頃の立春までに挨拶状を送付する
- すぐに返信する場合は「喪中見舞い」として送付する
- 何もしない
不幸があったことを知らず、葬儀へ参列していない場合は、お香典の代わりにお線香やろうそく、お供え物などの進物を贈るのも良いでしょう。
喪中に関するよくある質問
喪中に関するよくある質問をまとめてご紹介しますので、気になる項目はぜひチェックしておきましょう。
宗旨宗派による喪中の違いは?
浄土真宗では、亡くなった方は誰でもすぐに極楽浄土へたどり着くと考えられているため、そもそも喪中や忌中という概念がなく、自粛する必要もありません。
ただし、周囲の方々が宗旨宗派やこのような知識を理解しているケースは少ないため、一般的には喪中はがきを用意して身内の死を報告します。
キリスト教に喪中はあるの?
キリスト教においては、天に召されることは幸福なことと考えられているため、喪中という概念がありません。
イスラム教に喪中はあるの?
イスラム教においては、男性は3日間・女性は4ヶ月と10日間、喪に服す期間があります。
無宗教の場合の喪中はどうしたらいい?
無宗教の場合、喪中という考え方は不要です。家族や周囲が気にならないようなら、とくに自粛期間などを設ける必要はないでしょう。
一方で、無宗教のご家庭でもお坊さんに読経してもらう葬儀や、個人的に供養するためのお仏壇を用意するケースもあり、仏教や神道と同じように喪中を過ごす方もいらっしゃいます。
また、一般的に訃報を伝えるための喪中はがきの用意は必要となるためご注意ください。
まとめ:喪中と忌中は期間が異なり、やってはいけない4つのことがある
喪中について、忌中との違いや、期間と対象範囲、喪中にやってはいけないことについて解説しましたが、まとめると次のとおりです。
- 喪中とは故人の一周忌が終わるまでの期間のことをいい、対象の範囲は一般的に2親等以内、配偶者の姻族も含まれるが、3親等以降の親族が喪に服しても構わない。
- 喪中と忌中との違いは期間にあり、忌中は仏教なら四十九日法要、神道なら五十日祭といった忌明けを迎えるまでの時期のことをいう。
- 喪中にしてはいけないことが4つあり、お正月の祝い事をはじめ、忌中を過ぎても、神社への初詣や参拝、お祝い事の開催や参加、旅行は神社や周囲の方へ確認する必要がある。
- 喪中の期間は慎ましく過ごす必要があり、服装においても派手な色柄を避けて、質素なスタイルで暮らすようにする。
- 喪中の方は、年末年始の挨拶をお断りするための喪中はがきを準備し、受け取った側が返信する際は寒中見舞いや喪中見舞いを送付する。
北のお葬式では、北海道一円の葬儀のご紹介をはじめ、葬儀後の喪中期間もご遺族の皆さまが安心できるようにサポートしています。
喪中に必要な手続きや、喪中や忌中の過ごし方における不明点、お悩みやお困りごとの無料相談を承っていますので、どうぞお気軽にお問い合せください。