亡くなった人の遺品整理。しなければいけないと思っても、思い入れがあるものを捨てるのは気が進まなかったり、処分の方法がわからなかったりと、スムーズに進められない方も多いようです。
今回は遺品整理の準備や進め方、業者に依頼する場合の注意点など、遺品整理について詳しくご説明します。
遺品整理とは?いつから始めるべき?
遺品整理とは
家族や親族が亡くなった後、故人が遺した生活用品や家具、家電製品、アクセサリー、趣味に関するものなどを整理し、処分したり形見分けしたりといった作業のことを「遺品整理」と呼びます。
一口に「遺品」と言っても、手元に残しておきたいもの、市場価値があるもの・無い物、親戚が欲しがるものなどがあり、どのように扱えば良いのか判断が難しいと感じる人も少なくありません。
遺品整理を実際に経験すると、ほとんどの方は思ったよりも大変だったと感じるのではないでしょうか。
また、家族を亡くした悲しみや葬儀の疲れなどが原因で、遺品整理を始められないという人もいます。遺品整理はいったいどのようなタイミングで行えば良いのか、以下でご説明します。
遺品整理のタイミング
急いで行わなければいけない事情がないかぎり、遺品整理をはじめるタイミングに決まりはありませんが、実際には以下のタイミングで始める方が多いようです。
- 葬儀後に行う必要がある諸手続きを終えてから始める。
- 死後四十九日間、故人は冥土を旅しているという仏教の考え方をもとに、四十九日の法要を終えてから始める。
- 相続人が複数いる場合や形見わけの相談をしたい場合、親族が集まる四十九日法要の際に話し合ってから始める。
- 気持ちが落ち着いてからはじめる
遺品の処分や相続について遺言状に記述されている場合もありますので、遺品整理をはじめる際は、遺言状の有無や内容を確認すると良いでしょう。
法律で、遺品整理は相続人が行うことが定められています。
ですから、複数の相続人がいる場合、一人で遺品整理をすることは避け、四十九日法要などで親族が集まる際に話し合ってからはじめることで、後々トラブルになるリスクを軽減できるでしょう。
遺品整理の期限
前述したように遺品整理を行うタイミングに決まりがあるわけではありませんが、故人が賃貸住宅で一人暮らしをしていた場合、物件を引き払い明け渡さなければいけないので、早めに遺品整理を行う方が多くいます。
誰も住んでいない物件に家賃を払い続けることは避けたいものですよね。
また、遺品の中に法的な手続きが関係するものが含まれる場合、期日に間に合うように手続きを行わなければならず、早めに対応する必要があります。
遺品整理が大変な理由
亡くなった方の生活環境や所有物の量など、状況によって遺品整理の大変さは異なりますが、遺品整理を経験した人の多くが「大変だった」「時間がかかった」と言うのはなぜなのでしょうか。
その理由を知り、生前に可能な範囲で所有物を整理しておくことで、遺品整理の負担を少しでも軽くすることができるため、ここでは遺品整理が大変な理由についてご紹介します。
遺品が多過ぎる
単純に物量が多いほどその整理や処分には時間がかかるため、大量の遺品があることで、遺品整理が困難になるというのはよくある事例です。
近年では「親の終活を手伝う」という風潮もあり、その際に物の処分でもめてしまうというのもよく聞く話ですが、亡くなる方や終活を考えるような世代には、今のように簡単に物を手に入れることができなかった人も多く、所有物に対する執着心が強いということも珍しくありません。
少しでも遺品整理を楽にするためには、不要な物を処分しておくことが有効と言えるでしょう。
処分して良い物の区別がつかない
遺品整理を始めると必然的に物を処分することになりますが、その際に、処分して良い物と処分してはいけない物の判断が難しく、ネットで調べたり、相続人同士で相談したりすることで時間がかかってしまうというのも、遺品整理が大変な理由のひとつです。
価値がわかりづらい骨董品や美術品を所有している人や、古い書類を処分していない人は、前もって価値を伝えておく、不要な書類は処分するなどしておくことで、相続人の負担を軽くすることができるでしょう。
思い出がよみがえってしまう
自分自身の所持品を整理する場合でも、物にまつわる思い出がよみがえり、手が止まってしまうということはよくあるのではないでしょうか。
それが家族の遺品となると、なおさら感情が揺さぶられてしまい、作業が進められないというのもよく聞く話です。
もしも事情が許すのであれば、そのような場合は無理に遺品整理を行わず、時間が経過して気持ちが落ち着いてから作業を進めるというのも一つのやり方なのではないでしょうか。
遺品整理の進め方
準備する物
遺品整理を行う際に必要となるもの、準備すると便利なものは下記の通りです。
遺品整理は時間がかかり大変な作業となることが多いので、効率的に進めるために、あらかじめ下記の道具を用意してから始めることをおすすめします。
道具
- ごみ袋
- 段ボール
- ガムテープ
- ビニール紐
- 輪ゴム
- 雑巾、バケツ
- ハサミ、カッター
- マジック
- メモ用紙
- ドライバーなどの工具
- 台車
- 荷物を運搬する車
遺品整理ではたくさんの荷物を運ぶため、台車を使用することで効率よく作業できます。
わざわざ購入する必要はありませんが、可能であれば台車を準備することをおすすめします。ゴミ処理場やリサイクルショップに遺品を運搬する場合は、運搬用の車を用意しましょう。
服装
- 動きやすく、汚れても良い服
- 脱ぎ履きしやすい靴
- マスク
- 軍手
- スリッパなどの室内履き
作業中、遺品を車にのせたり屋外の物置に運んだりと、頻繁に靴を脱ぎ履きすることが予想される場合、簡単に脱ぎ履きできる靴を用意しておくと良いでしょう。
室内で作業する際に小さな金具などを踏んでケガをしないために、スリッパなど底に厚みがある室内履きを履いて作業することをおすすめします。
遺品整理の方法
1.仕分ける
はじめに遺品を下記の4種類に仕分けましょう。
- 貴重品
- 思い出の品
- リサイクルするもの
- 廃棄するもの
以上の4種類について、以下で詳しく説明します。
貴重品
貴重品には以下のようなものが該当します。
- 現金
- 通帳
- 不動産関係の書類
- 有価証券
- 貴金属、美術品、骨董品、宝石、ブランド物など高価なもの
これらは相続財産にあたり、整理するには法的な手続きが必要となります。
思い出の品
故人が愛用していたもの、故人との思い出が詰まったものなど、手元に置いたり親戚に分けたりする品を選別します。
思い出の品は、取っておくものと処分する物の仕分けが難しいため、選別に時間がかかる場合もあります。自身の居住環境や親戚の人数などを考慮して進めましょう。
リサイクルするもの
遺品をリサイクルするためには、リサイクルショップに買取を依頼する、資源回収ボックスを利用するなどの方法があります。
家電製品や家具、衣類、紙類などはリサイクルできることが多いようです。
リサイクルショップで買取不可となった家電は、回収を行っている家電販売店や指定引取場所を利用して処分します。
廃棄するもの
廃棄するものは、自治体で定めるゴミの分別ルールを守って仕分けます。ゴミステーションを利用して廃棄する場合、自治体の指定するゴミ袋に入れましょう。
2. 処分する
貴重品や思い出の品は保管し、リサイクルするものは店舗に持っていく、出張査定を依頼する、回収ボックスを利用するなどして対応しましょう。
廃棄するものは、普段利用しているゴミステーションに出したり、家庭ゴミを受け入れている清掃工場に持ち込んだりして処分します。
いずれの場合も自治体や清掃工場が定めるルールにしたがって、ゴミを仕分けることが大切です。
家電製品や消火器など、一部の家庭ゴミは自治体で収集していないため、廃棄方法を調べて処分する必要があります。
遺品整理を業者に依頼する場合
遺品整理の料金相場
遺品整理を業者に依頼する場合、料金はどのくらいかかるのでしょうか。北のお葬式対応エリアの札幌市における遺品整理の基本料金は、2LDK90,000円〜、3LDK130,000円〜、4LDK200,000円〜が相場のようですが、これはあくまでも基本料金ですから、作業するお宅の広さや物量などの状況によって追加料金が発生する場合も多く、実際に支払う金額とは大きく異なることも珍しくありません。
実際に支払う料金は、3LDKで35万円程度、4LDKで40万円程度が目安となるようですが、前述したように、作業するお宅の状況により価格は大きく異なるため、見積を依頼して確認すると良いでしょう。
なお、ゴミ屋敷のような状況の部屋や特殊清掃が必要な場合は別途料金が発生するため、費用は上記の相場よりも高額となります。
遺品整理業者の選び方
遺品整理を業者に依頼する場合、「貴重品を扱う」「他人が自宅に入って作業する」「定価がない」といった特性から、中にはトラブルが起きてしまうこともあります。
遺品整理の際に発生するトラブルとしては、「見積金額と請求金額に大きな差があり、高額な料金を請求される」「形見や権利書など大切なものを勝手に処分される」「貴金属など高額なものを盗まれる」などがあげられます。
トラブルを防ぐためにはどのように業者を選べば良いのでしょうか。
業者を決める際は複数社に見積を依頼することをおすすめします。
複数の業者の見積を比較することで、相場よりも高額な業者に依頼することを避けられますし、料金が安くても内容が不明瞭であるなど、不安要素に気づきやすくなるためです。
また、遺品整理を行う場所を訪問せずに見積を作成する業者や、遺品整理の際に遺族を立ち合わせない業者には注意した方が良いでしょう。
事前に複数社から見積を取るのは面倒だと思う人もいるでしょうが、遺品整理を業者に依頼する場合は高額な費用がかかるとともに、他人が大切な遺品を扱うことになるため、慎重に対応することをおすすめします。
遺品整理に必要な資格
遺品整理業は資格がなくても開業することが可能ですが、実際に作業を行う上では必要となってくる資格や許可証があります。
そのため、依頼を検討する際は、資格を取得している業者を選ぶことも大切なポイントです。
遺品整理業を行う業者が取得している資格の種類と内容を以下にまとめましたのでご確認ください。
遺品整理士
一般社団法人・遺品整理士認定協会の認定資格。遺品整理に関する法律や廃棄物の処分について講義や試験を受け、試験の合格者が取得できる資格です。
一般廃棄物収集運搬許可証
一般家庭の不用品を回収するために必要な資格。この資格が無い業者は、資格を有する業者に業務を委託することで、廃棄物が適切に処分されます。
一般廃棄物の許可をもっていない業者には、許可を持った業者に廃棄を依頼していることを確認すると良いでしょう。
古物商許可証
業者が中古品の売買を行うために必要となります。この許可証がある業者は、遺品整理の際に不用品を買い取ることが可能です。
許可証がないにも関わらず不用品の買取を謳っている業者は信頼できない業者であると言えるでしょう。
遺品整理を行う際の注意点
家電やアルバムなどは扱いに注意
比較的新しい家電製品はリサイクルショップで買い取ってもらえたり、フリマアプリで購入してもらえたりする場合があるので、すぐに処分せずショップやアプリを利用してみるのも良いでしょう。
廃棄する場合は自治体の定めるルールに従います。テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機は家電リサイクル法の対象となるため、自治体では回収していません。
自治体で回収している家電でも、リサイクルボックスなどを利用して無料で廃棄できる場合もあるので、自治体のホームページを確認してみましょう。
アルバムやビデオテープを取っておくと、場所をとるので処分を考える人もいますが、一度処分してしまうと取り戻すことはできません。
後悔しないためにもよく考えて、家族と相談することが大切です。
収納場所に困る場合は、アルバムやビデオをDVD化するサービスを利用するという方法がおすすめです。
DVD化することでコンパクトに収納できますし、デジタル化することで、カビが生えたり変色したりせずに長期間保存することが可能になります。
物によっては専門家に鑑定依頼を
美術品や骨董品、貴金属や着物など、素人には価値がわからない遺品にも注意が必要です。
高額な遺品が含まれている、相続人が平等に相続したい、相続した遺品の販売を検討している等、専門家に鑑定してもらわなければいけないケースもあります。
相続問題はクリアにしておく
遺品の中には相続に関わる財産が含まれる場合があります。
遺書があり、遺品について記述されていれば、それに従って遺品を分配、相続します。遺書がない場合は、法定相続人で分割することになります。
相続の際は遺産分割協議を行いますが、その際は、遺産分割協議書を作成しておくと良いでしょう。
遺産分割協議書は法律上必ず必要とされているわけではありませんが、作成しておくことで、後々トラブルになった際に解決しやすくなります。
遺品相続について相続人同士で解決が難しい場合は、法律家に依頼することをおすすめします。
なお、故人が借金をしていたなどの理由で相続放棄をする場合、遺品整理を行うことができないため注意が必要です。
遺品整理は法的な手続きが必要となる場合もあるため、必要に応じて弁護士や税理士等と十分ご相談された上で、ご自身の責任においてご対応ください。
まとめ
遺品整理をはじめるタイミングに決まりがあるわけではありませんが、葬儀後の手続きを終えた後や四十九日法要をきっかけとして取り掛かる方が多いようです。
複数の相続人がいる場合、一人で始めずに相続人同士で話し合って作業にあたりましょう。
遺品整理に期限があるわけではありませんが、一人暮らしをしていた方が亡くなった、遺品の中に法的な手続きが必要なものが含まれているといった場合は、賃貸契約の期限や手続きの期日に間に合うように行う必要があります。
遺品整理を業者に依頼する場合、複数社から見積をとって確認する、資格の有無を確認するなどして安心して依頼できる業者を探しましょう。
遺品整理は法的な手続きが必要となる場合もあるため、必要に応じて弁護士や税理士等と十分ご相談された上で、ご自身の責任においてご対応ください。