大切な家族や最愛のパートナーを亡くした方に役立つグリーフケアとは、具体的にどのようなことをいうのか、知っておきたい知識をまとめたのでご紹介します。
グリーフケアは、医療従事者や看護や介護、葬儀の分野で重視され始めた取り組みです。自分自身や周囲の方にできるケアの方法もあり、お困りの方は今すぐ開始可能です。
そこで、具体的なグリーフケアの方法や、大切な方やペットを亡くしてグリーフケアが必要かどうか迷う場合の判断方法についても解説します。
悲しみや苦しみをどう乗り越えたら良いのか分からない方や、辛そうな家族や友人などを立ち直らせてあげたいと思っている方は、ぜひお役立てください。
目次
グリーフケアとは?
グリーフケアに関する基礎知識や、知っておきたい言葉の意味を解説します。
グリーフケアとはどういう意味?
グリーフ(英語:grief)とは、死別・後悔・絶望などによって受ける悲嘆や悲痛のことを表し、ケア(英語:care)は、世話をする・面倒をみるといった意味を示します。
つまり、グリーフケアとは、大切な方を亡くしたり、ペットロスで悲しんだりしている方のケアやサポートをすることをいいます。
客観的に考えれば、命には限りがあると理解していても、いざその時が訪れると、事実を受け入れることは容易ではありません。
人は死別などにより心に大きな衝撃を受けた場合でも、「しっかりしなければ」という責任感や周囲への配慮から、無理に気丈に振る舞うことがありますが、その結果、心身に負担を抱えてしまうことも少なくありません。
そのような辛い立場にある方が希望を持って生きられるよう、立ち直りの支援をすることをグリーフケアといい、医学界などでは「遺族ケア」とも呼んでいます。
グリーフケアによる効果
グリーフケアでは、悲しみや苦しみを和らげ、心身のバランスを整えて自分の感情をコントロールできるようにする効果が得られます。
言い換えると、グリーフケアはありのままの事実を受け入れ、従来の日常生活や本来の自分の姿を取り戻すための対処法です。
グリーフケアについて学ぶ方法は?
グリーフケアには、本格的に学びたい方から手軽に習得したい方まで、学習できる専門機関があります。
上智大学グリ-フケア研究所
上智大学グリ-フケア研究所では、グリーフケアにかかる研究とグリーフケアやスピリチュアルケアに携わる人材の養成機関があり、東京と大阪の2ヶ所にキャンパスがあります。
一般社団法人グリーフケア協会
グリーフケアに国家資格はありませんが、グリーフケア協会では独自で1〜3日間の短期講習を開催し、グリーフケアアドバイザーの認定講座による受講資格を付与しています。
グリーフケアが必要かどうかの判断ポイント
グリーフケアが必要かどうかを判断するにはポイントがあります。対象者となる方や具体的に見受けられる反応、症状について解説します。
グリーフケアの対象となる方
グリーフケアはとくに、災害や不慮の事故など、想定外の出来事が起こった遺族にとって必要不可欠といえるでしょう。
最愛の人や家族を亡くした方をはじめ、犬や猫などのペットロスを経験した方など、本人にとってかけがえのない大切な存在を喪失したことでグリーフケアが必要なケースもあります。
さらに、悲嘆は死と向かい合った瞬間だけではなく、後から込み上げるケースもあり、葬儀後に落ち着いてから、行き場のない悲しみや苦しみに襲われる方も少なくありません。
死を覚悟できていた場合でも、看病や介護の忙しさや慌ただしさから解放されたことによって喪失によるダメージを受け、グリーフケアが必要になる方がいることも知っておきましょう。
グリーフケアが必要な方の症状
グリーフケアが必要な方にはさまざまな症状が見受けられます。自分自身について不安を感じる場合や、第三者の立場から心配な場合には、当てはまる要素があるかチェックしてみてください。
心理的(精神的)な症状
心理的(精神的)には、次のような反応や症状が突発的もしくは継続的に起こり、喜怒哀楽の感情が激しくなる場合や情緒不安定になるケースがあります。
- 悲壮感
- 孤独感
- 不安感
- 恐怖感
- 罪悪感
- 無気力感
- 虚無感 など
身体的な症状
身体的な反応や症状では、次のような体調の異変や障害が起こる場合があり、複数の症状を併発するケースもあります。
- 食欲減退
- 睡眠障害
- 呼吸障害
- 動悸
- めまい
- 頭痛
- 疲労感 など
行動に現れる症状
行動に現れる反応や症状としては、次のような現象を引き起こす場合があり、重度になると長期的なケアが求められるケースもあるため注意が必要です。
- 号泣
- 呆然とする
- 引きこもり
- 集中力の低下
- 注意力の欠如
- 思考力の低下
- アルコール依存 など
グリーフケアの過程と期間
グリーフケアには長い時間を要するため、回復するまでの心の過程段階と、最終的に必要となる期間について、ポイントを押さえて解説します。
悲嘆から心が回復するまでの過程と段階
大切な方やペットを失ったときの悲嘆から、心が回復するまでには、次の4段階があるため、過程について解説します。
- 衝撃期:ショック・否定
- 悲痛期:深い悲しみ・思慕
- 回復期:日常生活への適応
- 再生期:悲嘆反応の改善
それぞれの期間は長引くこともあり、回復期や再生期に入っても油断は禁物で、再び悪化して悲痛期などへ戻ってしまう可能性もあるため、ご注意ください。
①衝撃期:ショック・否定
衝撃期とは、死後すぐに感じる驚きやショック、死を信じがたく受け入れにくい否定的な時期にあたります。
予期せぬ災害や不慮の事故など、想定外のケースで死を迎えた場合はとくに衝撃の度合いが大きく、涙も出ないような状態や、理解が追いつかずにただ困惑する様子が窺えます。
②悲痛期:深い悲しみ・喪失
姿や気配がなくなり、亡くなった事実を受け止められるようになると、深い悲しみに陥り、故人やペットに対する想いを馳せて思慕する悲痛期になります。
自分を責めたり後悔したりすることや、他人を羨ましく感じること、周囲を恨むことなどがあり、感情の起伏が激しくなる場合もあるナイーブな時期のため注意が必要です。
③回復期:日常生活への適応
飲食や睡眠などを中心に従来の生活リズムを取り戻せる回復期を迎えると、仕事や学校などへも通いやすく、心身に現れた症状も徐々に軽減して楽に過ごせるようになります。
人とのコミュニケーションに支障がなく、気分転換ができるようになれば安心ですが、悲痛期に戻り再び悲しみを感じるケースも少なくないため、何事も無理をしないことが大切です。
④再生期:悲嘆反応の改善
悲嘆反応が改善し、安定した精神状態を保てる再生期になると、故人やペットのいない日々を乗り越えて前向きに生きることの必要性を感じられるようになります。
故人やペットのためにも、自分自身を労ることや癒やされることを重視し、良き思い出と供養を大事にしてゆきましょう。
グリーフケアにかかる期間
亡くなった方 | 平均期間 |
---|---|
親 | 約3年 |
配偶者 | 約4半〜5年 |
子ども | 約5年 |
グリーフケアにかかる期間には個人差があり、亡くなった方や症状、回復度合いによっても年数に違いがありますが、おおよその目安は約3〜5年程度です。
心身を健康な状態に戻すうえでは、若い方より高齢者の方が時間を要する傾向があり、放置するとPTSD(心的外傷後ストレス障害)や、うつ病を発症するリスクもあります。
重度になると、自傷行為をしたり、不規則な生活や免疫力の低下から病にかかりやすくもなるため、悪化しないように気をつけなければなりません。
グリーフケアの6つの方法
グリーフケアには6つの方法があり、今すぐ始められる取り組みもあるため、自分に適した方法を探してみることをおすすめします。
- 感情や行動を否定せず心のままに表現する
- 法事・法要などの儀式で区切りをつける
- お墓やお仏壇を心の拠り所にする
- 遺品整理をする
- 支えや共感を得られる相手や物を頼る
- グリーフケアの専門家を頼る
①感情や行動を否定せず心のままに表現する
グリーフケアでは、悲しみを堪えたり感情を誤魔化したりすることなく、心のままに表現することが大切です。
身近な人やペットの死を悲しむことは、人情や愛情がある証拠であり、決して悪いことではありません。
周囲の方々がサポートする際も、本人の悲しみや苦しみを理解して、感情や行動を否定することなく受け入れることを意識しましょう。
②法事・法要などの儀式で区切りをつける
葬儀後に故人を偲んで供養の儀式をする法事・法要は、遺族や大切な方を失った方のグリーフケアとしても役立ち、気持ちを整理して区切りをつけやすいタイミングです。
仏教では四十九日法要、神道では五十日祭をもって忌明けとなります。キリスト教は1ヶ月後に、カトリックでは追悼ミサ、プロテスタントでは記念集会を行い、その後も命日に故人を偲びます。
無宗教の場合でも、命日に家族や親族と集い、故人の思い出を語らう機会を設けることで月日の経過を感じることができるため、現実として受け止めやすくなります。
③お墓やお仏壇を心の拠り所にする
お墓参りや、お仏壇へ手を合わせて故人やペットへ語りかけることは、グリーフケアとして大きな効果が期待できます。
死後、忌明け法要が終わるタイミングでお墓に納骨したり、用意しておいたお仏壇に魂を込めた位牌を安置し、お供えをして供養を行うのが一般的です。
近年はお墓の選択肢が増えていて、人とペットを一緒に納骨できるものなど、さまざまなタイプから選ぶことが可能です。
お仏壇も本格的なものから、無宗教の方やペットの供養に適したパーソナル仏壇まで、多種多様なタイプが販売されています。
④遺品整理をする
故人やペットへの未練や執着心を緩和できるよう、グリーフケアの一貫として、身の回りを片付ける遺品整理をするのがおすすめです。
故人やペットに関する手続きや遺産相続による申告手続きなど、期限を伴うものを除き、遺品整理は基本的にいつ着手しても構いません。
辛くなったら作業の手を止めるなど、精神的に安定しているときに少しずつ進めると良いでしょう。
⑤支えや共感を得られる相手や物を頼る
グリーフケアでは、素直に身近な方を頼ったり、同じ境遇の方と励まし合ったりすることも大切です。気持ちを吐き出すことで気分が晴れやすくなります。
誰かと接することを避けたい場合は、自分の気持ちをノートに書いたり、共感を得られる本や音楽などを頼るのも一つの方法です。
周囲が気遣って、気分転換のために飲食やお出かけへ誘う場合には、癒やしを感じる方法は人それぞれ異なることを念頭に置いて、本人が過ごしやすい方法を選べるようにしましょう。
⑥グリーフケアの専門家を頼る
グリーフケアはメンタルクリニックや心療内科などでも受診ができるため、専門家がいる病院を選ぶと良いでしょう。
また、通院する以外にも、インターネットを介したカウンセリングを受けることや、寄り添ってくれる方と語らいの時間を設けることも可能です。
参考として、専門機関の具体例をご紹介しますので、料金や内容の詳細については直接以下のサイトにてご確認ください。
まとめ:グリーフケアとは死後の悲しみや苦しみを支援することをいい6つの方法がある
グリーフケアの意味や方法、必要かどうかを判断するポイントを解説しましたが、まとめると次のとおりです。
- グリーフケアとは、大切な方や家族、ペットなどを亡くした悲しみや苦しみの渦中にある人のケアやサポートをすることをいう。
- グリーフケアによって死後の悲嘆を乗り越えて心が回復するのには時間を要し、3年以上の期間を費やす場合がある。高齢者の方が回復が難しい。
- グリーフケアが必要な方には、心理的(精神的)症状、身体的症状、行動に現れる症状が見受けられ、複数の症状を併発する場合もある。
- グリーフケアは病院へ通院する以外にもさまざまな方法がある。悲しみを我慢せず気持ちを吐き出すことや、法事・法要、お墓やお仏壇による供養、遺品整理などを行うと良い。
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