弔問は多くの参列者が集う葬儀とは違い、個別に故人や遺族と対面することによって目立ちやすいため、作法やマナーには気をつけなければなりません。
そこで本記事では、弔問とは誰が対象者で、期間はいつからいつまでに伺い、どんな流れで具体的に何をすれば良いのか、知っておきたい作法やマナーについて解説します。
弔問の服装と持ち物や押さえておくべき注意点をはじめ、弔問以外でお悔やみを伝える方法や弔問でよくある質問までご紹介しますので、適切な知識やマナーの習得にお役立てください。
目次
弔問とは?
そもそも弔問とはどのようなことをいうのか、言葉の意味や弔問をする対象者について解説します。
弔問の意味
弔問(ちょうもん)とは、訃報を聞いた方が亡くなった方の自宅などを直接訪問して、遺族へお悔やみの言葉を伝えることをいいます。
迎え入れる遺族側は、弔問に訪れる人を「弔問客」と呼び、葬儀を取り仕切る遺族の代表者にあたる喪主が接客応対するのが一般的です。
弔問する対象者
弔問は誰がするべきといった対象者の決まりがなく、弔問をしてはいけない方についてもとくに定めはないため、遺族へ断られない限り誰もが弔問の対象者となります。
- 故人へいち早く会ってお別れを伝えたい方
- 遺族へ速やかにお悔やみを伝えて励ましたい方
- 葬儀へ参列できない方や参列できなかった方
上記のように、亡くなった方や遺族の方々からみて、親族や友人をはじめ、勤務先や介護施設の関係者、近所の方や知人など、あらゆる方々が対象となります。
ただし、お通夜や葬儀へ参列する場合、親戚以外の一般の方は、よほど遺族と親しい関係にない限り、弔問しないことが一般的のためご注意ください。
弔問に伺うのはいつからいつまでのタイミングが最適?
弔問で自宅などへ伺うには適切な時期があるため、いつからいつまでに伺えば良いのか、具体的なタイミングについて解説します。
死後すぐのお通夜の前日まで
死後、遺族はお葬式の準備で忙しくなるため、訃報連絡がきたらすぐに遺族へ弔問して良いかどうかを確認し、お通夜の前日までを目安に早めに弔問をするのが最良です。
早期の弔問では、葬儀の準備やほかの弔問客へのお茶出しを手伝うことができるため、親族や遺族と親しい方は手助けが必要かどうかを確認するのも良いでしょう。
なお、お通夜は一般的に18〜19時頃からですが、遺族や親族は斎場へ数時間早く到着する必要があり、当日は納棺の儀式や葬儀社との打合せなどが必要で、慌ただしい一日になります。
お葬式の日程が分からず弔問した場合や、いざ弔問してみて当日がお通夜と判明した際は、玄関先などでお悔やみを伝えて早々に帰宅するようにしましょう。
葬儀後3日経過してから四十九日まで
お通夜の前に弔問ができず、お通夜や葬儀へも参列できなかった場合は、葬儀後3日程度経過してから遺族へ連絡をして、四十九日までの期間で日時を確認してから弔問しましょう。
葬儀後は故人に関する死後の手続きや、四十九日法要やお仏壇・お墓といった供養の準備など、遺族にとってやらなければならないことが多く、疲れが出やすい時期でもあります。
強引に弔問しようとするのは迷惑行為にあたるため、遺族の都合や心情を察して、くれぐれも無理をさせないように心掛けてください。
四十九日以降の場合もある
次のようなケースなど、四十九日以降に弔問を行う場合は、ご遺族へ相談をして都合の良い日取りを確認してから自宅へ伺ってください。
- 訃報連絡が届かずに亡くなったことを知らなかった場合
- 入院などの事情により葬儀に参列できなかった場合
- 遺族が四十九日以降の弔問を要望した場合
弔問の服装のマナー
弔問での服装のマナーについて、押さえておきたいポイントをご紹介します。
喪服ではなく地味な略喪服(平服)を着用
弔問では、喪服ではなく、略喪服や平服と呼ばれる地味な服を着用するため、性別による違いや子どもの服装のポイントについて解説します。
男性の服装
男性の弔問の服装は、白いワイシャツに黒・グレー・紺色などのダークスーツやジャケットとスラックスなどを着用し、ネクタイや靴下も暗い色合いで統一します。
弔問は急いで駆けつけるといった意味合いから、ノーネクタイや仕事の作業着でも構いませんが、清潔感だけは意識するようにしましょう。
女性の服装
女性の弔問の服装は、黒・グレー・紺色などのワンピースやアンサンブルスーツ、パンツスーツなどが最良です。
ただし、夏場でもできるだけ肌の露出を控えるのがマナーのポイントで、五分袖・七分袖など肘の隠れる服装を選びましょう。
子どもの服装
子どもが弔問する場合は、幼稚園・小学校・中学校・高校などの制服を着用するのが最良で、赤などの華美な色柄のリボンやネクタイは外すか、暗い色合いに交換します。
私服は上下不揃いでも問題なく、正装を意識した黒・グレー・紺色のカーディガンなどを着用すると好感が持て、夏場はポロシャツでも問題ありませんので清潔感を意識しましょう。
結婚指輪以外のアクセサリーは身に付けない
男女ともに、基本的に結婚指輪以外のネックレスやブレスレットなどのアクセサリーは身に付けないようにしてください。
女性の場合、パール・黒真珠ならネックレスやイヤリングなどの装飾も問題ありませんが、目立たないシンプルなものを選びましょう。
弔問の持ち物のマナー
弔問で必要な持ち物や、お香典や手土産に関するマナーについて解説します。
弔問で必要な持ち物
弔問で必要な持ち物は、基本的にハンカチと数珠の2つのみとなります。お手伝いを予定している方は、白もしくは黒のエプロンを持参しておきましょう。
- ハンカチ
- 仏式の場合は数珠
- お手伝いをする場合はエプロン
弔問でお香典の持参は基本的に不要
弔問ではお香典は不要で、お葬式に参列できない場合のお香典は、初七日までを目安に現金書留によって遺族宛てに郵送することが正しいマナーです。
亡くなったことを知らずに葬儀へ参列できなかった方が後から弔問する際にお香典を渡す場合は、四十九日までは「御霊前」、四十九日後は「御仏前」という表書きにします。
ただし浄土真宗では、人が亡くなるとすぐに仏なると考えられているため、四十九日よりも前に弔問する場合も「御仏前」とするのが正しいマナーです。
弔問で手土産は不要
弔問では手土産は不要ですが、手ぶらで訪問するのが気になる方は、故人へのお供え物として、お花(枕花・仏花)やお菓子や果物などを持参すると良いでしょう。
掛け紙をする際はお香典と同じく、「御霊前」「御仏前」あるいは「御供」と書き、紙袋から取り出して、故人やお仏壇側ではなく自分から文字が読める向きでお供えします。
弔問の流れ
弔問の流れについて、マナー違反にならないための4つの順序を解説します。対話における具体的な文例やお悔やみの手順まで解説しますので、ぜひ参考になさってください。
- 事前に遺族へ連絡して日時を決める
- 玄関先でお悔やみの言葉を伝える
- 室内へ招かれたらお線香を手向ける
- 故人と対面する際は遺族が申し出てから行う
①事前に遺族へ連絡して日時を決める
弔問にあたっては、事前に次の4つの事項を遺族へ伝えて、遺族の都合を確認のうえ、復唱によって弔問の日時をしっかりと約束してから訪問しましょう。
- お悔やみの挨拶
- 故人との関係と名前
- 弔問する人数
- 弔問の日時
文例
この度はお悔やみ申し上げます。突然のご連絡申し訳ございません。私、〇〇(故人)さんと同じ会社に勤めております、〇〇と申します。
急な出来事に驚き、奥様やご家族の皆さまもさぞお力落としではないかと心配になり、お電話させていただきました。
ご多用中のことと思いますが、もしよろしければ、一緒に働いていた同僚と合計3名で弔問へお伺いしたいのですが、ご都合はいかがでしょうか?
それでは、〇日〇時頃に3名でお伺いいたしますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
②玄関先でお悔やみの言葉を伝える
弔問ではまず玄関先で「この度はお悔やみ申し上げます」と簡単な挨拶をしますが、「こちらで失礼させていただきます」と、親しい関係でない限り玄関先で済ませることが一般的です。
お供え物を持参した場合は、玄関先で紙袋などから取り出して、「どうぞお供えください」と、文字が相手側から読める向きで差し出します。
この際、遺族の心情や立場を察して、玄関先で失礼する際には、次のような励ましの言葉をかけてあげると良いでしょう。
文例
お力落としのないよう、どうぞお体に気をつけてご自愛なさってください。
お力になれることがあれば、どうぞ何なりとお申し付けください。
③室内へ招かれたらお線香を手向ける
室内へ招かれたら、遺族や親族へ「お悔やみ申し上げます」と簡単な挨拶をして、数珠を持ち、次の手順でお線香を手向けます。
- 正座をして遺族へ一礼する
- 祭壇に向かって座りご遺体や遺影へ一礼する
- ロウソクへ着火する
- お線香に火を付けて左手で仰いで炎を消す
- 合掌する
- 火消しを被せるか炎を仰いでロウソクを消す
- ご遺体や遺影へ一礼して遺族へも一礼する
④故人と対面する際は遺族が申し出てから行う
故人との対面は遺族からの申し出があった場合のみとし、「謹んで対面させていただきます」と伝えて、以下の手順で対面します。
亡くなった方の顔を拝見することに抵抗がある場合は、「お別れが辛くなりますので遠慮させていただきます」と、失礼のないようお断りしましょう。
- 数珠を持って故人の傍に正座する
- 膝を着いたままで枕元へ故人の顔が見える場所へ膝行して一礼する
- 遺族が顔の白い布を取り上げたら手を膝に置いたまま故人の顔を拝見する
- 故人へ向かい深く一礼して合掌する
- 膝を着いたまま膝退で一歩下がって一礼する
弔問における5つの注意点
弔問では気をつけるべき5つの注意点があるため、知っておくべき順序で解説します。
- 亡くなった方と対面できるとは限らない
- 大人数で押しかけない
- 事前に弔問の可否と日時を確認する
- 忌み言葉を使用しない
- 長居しない
①亡くなった方と対面できるとは限らない
近年のお葬式では、亡くなった病院などからご遺体を斎場の安置施設などへ直接搬送するケースが多く、自宅を弔問しても故人と対面できるとは限らないためご注意ください。
斎場によっては、家族や親族が故人と対面のできる安置施設を完備しており、お葬式までの期間も対面することが可能です。
②大人数で押しかけない
弔問では友人や知人が集団で押しかけて遺族や近所の方へ迷惑をかけないよう、大勢いる場合は2〜3名の代表者を選出して弔問しましょう。
少人数の家族葬などで葬儀へ参列できない場合でも、お別れ会を開催して故人を偲ぶ方法などもあるため、大人数の場合は葬儀社へ相談してみるのも一つの方法です。
③事前に弔問の可否と日時を確認する
弔問は必ず事前に訪問して良いかどうか、遺族へ連絡をして日時を確認するようにしてください。
家族葬など身内だけのお葬式では、故人や遺族の意向で弔問を辞退することがあり、お香典や弔電、供物などをお断りするケースもあります。
④忌み言葉を使用しない
弔問や葬儀などの場面では、不幸を想像させる忌み言葉(いみことば)を使用しないのがマナーで、次のような重ね言葉・繰り返し言葉、宗教による言葉選びにもご注意ください。
忌み言葉
死ぬ・別れる・終わる・失う・消える・最後 など
重ね言葉
重ね重ね・度々・たまたま・いろいろ・わざわざ など
繰り返し言葉
再び・追って・次々と・引き続き・繰り返し など
宗教による言葉の違い
冥福(浄土真宗以外の仏教のみ)
天国(キリスト教のみ・仏教は「あの世」)
⑤長居しない
弔問では、故人との思い出を遺族と語らうことがよくありますが、とくに葬儀前後の忙しい時期は、長居をして迷惑をかけないようご注意ください。
遺族側の意向で食事などへお誘いを受けた際にお付き合いをしても構いませんが、喪中の期間は慎ましく過ごすのが基本のため、とくにお酒の席ではマナー違反に気をつけましょう。
弔問以外で故人や遺族へお悔やみの気持ちを伝える方法とは?
弔問以外で故人や遺族へお悔やみの気持ちを伝える4つの方法についてご紹介しますので、遺族が弔問を辞退している場合や、弔問するかどうか迷っている方はどうぞご検討ください。
- 葬儀で供花や弔電を贈る
- 自宅へお花や供物を贈る
- お墓参りをする
- 手紙やハガキを郵送する
葬儀で供花や弔電を贈る
遺族が辞退していなければ、供花や弔電を贈ることで故人や遺族への想いを形にすることができ、供花なら弔問や葬儀へ参列する方も併用できるうえ、団体で贈ることも可能です。
供花は1基あたり約1~2万円、2基1対なら約1万5千円~3万円が相場費用で、祭壇やほかの供花と調和が取れるデザインに仕上げられるよう葬儀社へ申し込みます。
弔電は葬儀に参列できない方や企業や団体が利用しやすく、費用は1,320円からとなっており、予算に応じてお線香などをセットにした台紙を選ぶことも可能です。
自宅へお花や供物を贈る
お悔やみのお花や供物は、弔問で持参する以外に自宅へ送る方法もあります。お花や供物は亡くなったことを知らなかった場合や、四十九日や命日などの供養としても最適です。
お供え物はお菓子や果物以外にもロウソクやお線香の進物品も人気があり、仏壇店やギフトショップではさまざまな商品が販売されています。
お墓参りをする
弔問を辞退しているご遺族に対しては、お墓参りをさせてもらう方法を選択するのもおすすめで、お墓参りなら遺族との日程調整の必要もなく、スムーズに故人の供養ができます。
お墓にはさまざまなタイプがあり、仏花や供物やお線香などが不要な場合もあるため、あらかじめ墓地の名称やお墓の種類などを確認して、現地のお参り方法を調べてから訪れましょう。
手紙やハガキを郵送する
遠方にお住まいの方や体調不良などの事情で葬儀へ参列できなかった方など、ご遺族へお悔やみの言葉や想いを伝えたい方にとって、手紙やハガキは最適な手段です。
「返信は不要です」と、最後に一言添えて送るようにしてください。
弔問に関してよくある質問
弔問に関してよくある質問をご紹介しますので、気になる項目があれば、疑問やお悩みの解消にどうぞお役立てください。
お葬式の日程はいつ?
一般的に亡くなった翌日以降にお通夜を行いますが、葬儀の種類にはお通夜を省略する一日葬と呼ばれる形式もあるため、具体的な日程や参列の可否はご遺族や葬儀社へ確認しましょう。
なお、火葬は死後24時間を経過しなければならないという法律があり、2日間のお葬式では、1日目にお通夜、2日目に葬儀・告別式と火葬を行うのが一般的となっています。
ただし、お葬式の日程は斎場や火葬場の空き状況、家族・親族の集まりやすさ、お付き合いのある宗教者の都合など、さまざまな事情を加味して決められる仕組みです。
弔問でのお線香の手向け方は?
お線香の本数や手向け方は、宗旨宗派によって異なるため、分からないときはご遺族へ確認しても問題ありません。
一般的には、四十九日までの弔問ではお線香は1本が基本で、浄土真宗ではお線香を立てずに香炉の大きさに合わせて折ってから横へ寝かせます。
弔問では何を話したらいい?
弔問では、死因を尋ねるのは失礼にあたるため、気になっても遺族側から話すまでは質問せず、故人との思い出などを話しましょう。
故人の良い評判や頑張っていたことなど、家族が知らない故人の姿について教えてあげると喜ばれます。
まとめ:弔問は流れやマナーと5つの注意点を知っておきましょう!
弔問にあたって知っておくべき流れやマナーと注意点について解説しましたが、まとめると次のとおりです。
- 弔問の時期は基本的に死後すぐからお葬式の前日までと、葬儀後3日経過してから四十九日までだが、遺族が問題なければ四十九日後に弔問しても良い。
- 弔問は喪服ではなく平服を着用、持ち物はハンカチと数珠とし、手土産はなくても構わない。気になる場合はお花やお供え物を持参して、お香典は葬儀で渡すか自宅へ郵送する。
- 弔問では故人と対面できるとは限らないことや大人数で押しかけないことを理解し、事前に弔問の可否と日時を確認する。弔問時には忌み言葉を避け、長居しないよう注意する。
北海道で、お葬式から葬儀後まで、幅広いサービスを提供している北のお葬式では、故人の親族や身近な方が弔問できる安置施設を完備した斎場もご案内しております。
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