喪主の挨拶はどんなタイミングで何回行うのか、どんなことを話せば良いのか、喪主という大役では、不安になる方が多くいらっしゃいます。
上手なスピーチをするにはコツがあるため、本記事では押さえておきたい5つのポイントについて解説します。
葬儀のケースに合わせた具体的な文例についてもご紹介しますので、どうぞ最後までご覧いただき、参考になさってください。
目次
葬儀の種類による喪主挨拶のスピーチ回数の違い
種類 | 挨拶の回数 | 葬儀の概要 |
一般葬 | 3〜4回 | 一般参列者を招いてお通夜と葬儀・告別式の2日間で行うお葬式 |
家族葬 | 2〜3回 | 家族や親族など30名未満の少人数によりお通夜と葬儀・告別式の2日間で行うお葬式 |
一日葬 | 1回 | お通夜を省略して1日で行う家族葬 |
直葬・火葬式 | 無し | 葬儀を省略し火葬のみを目的として数名で行うお葬式 |
地域や葬儀の流れによっても異なりますが、一般的に喪主による挨拶のスピーチ回数は、葬儀の種類ごとに異なり、葬儀の規模が程大きいほど回数は多くなります。
喪主の挨拶は、参列いただいた方へのお礼を伝える機会となるため、火葬のみを行う直葬や火葬式では喪主の挨拶は不要です。
一方で、家族や親族といった身内だけで葬儀を執り行う家族葬や一日葬の場合でも、喪主による挨拶のスピーチは必要となる場合もあるため、事前にしっかり確認し、準備しておきましょう。
喪主挨拶のスピーチをするタイミング
喪主が挨拶として公にスピーチをするタイミングは、次のとおり最大4回あるため、葬儀の流れに沿った順序で、押さえるべきトークの内容について解説します。
- 通夜振る舞いの前
- 通夜振る舞いが終わるとき
- 告別式や出棺のとき
- 精進落としの前後いずれか
葬儀によっては、お通夜が始まるときに挨拶をするケースなどもあるため、あらかじめ葬儀社と打ち合わせて、挨拶のタイミングを確認しておくと安心です。
①通夜振る舞いの前
お通夜では一連の儀式が終わり、通夜振る舞いの会食の席へ移動するタイミングで、葬儀社の指示に従って喪主が挨拶をするケースがあります。
振る舞いでの挨拶は、次の順序で進めると聞き取りやすく上手にまとまります。参列いただいたことへのお礼や故人のエピソード、通夜振る舞いのご案内をしましょう。
- 故人との関係と会葬へのお礼
- 故人に代わり生前のお礼
- 故人とのエピソード
- 今後のお付き合いやお力添えのお願い
- 通夜振る舞いの案内
通夜振る舞いの前の基本的な文例
通夜振る舞いでの挨拶では、最後に次のようなトークで会食の席を用意していることを伝えます。
ささやかではございますが、お食事の用意をしておりますので、お時間の許す限りお付き合いいただき、故人の生前の話などをお聞かせいただければ幸いです。
心ばかりですが、別室にてお食事の用意をしておりますので、どうぞごゆっくりとお寛ぎいただき、故人の供養のためにも召し上がっていただければと存じます。
通夜振る舞いが終わるとき
通夜振る舞いの終盤からお開きとなる解散のタイミングで喪主による挨拶を行う場合、次の3つのポイントを押さえて挨拶をします。
- 改めて会葬いただいたことへのお礼
- 通夜振る舞いをお開きとする挨拶
- 翌日の葬儀・告別式の案内
ただし、通夜振る舞いの前に挨拶をしておらず、初めての挨拶の機会となる際は、次の順序でお礼や故人のエピソードを語り、解散の挨拶と翌日の葬儀・告別式の案内をしましょう。
- 故人との関係と会葬へのお礼
- 故人に代わり生前のお礼
- 故人とのエピソード
- 今後のお付き合いやお力添えのお願い
- 通夜振る舞いをお開きとする挨拶
- 翌日の葬儀・告別式の案内
通夜振る舞いが終わるときの基本的な文例
通夜振る舞いが終わるときの挨拶では、お開きの号令となるトークと、翌日の葬儀・告別式の挨拶の2つを漏らさないことが大きなポイントです。
ゆっくりとご歓談いただきたいところですが、夜も更けて参りましたので、これにてお開きとさせていただきたいと思います。
明日の葬儀・告別式は、午前〇時より当斎場にて予定しておりますので、よろしければお見送りいただきたく存じます。
本日は誠にありがとうございました。
③告別式や出棺のとき
告別式や火葬場へ向かう出棺のタイミングで、喪主が挨拶をするケースもあります。お通夜へ参列できなかった方々が含まれる前提で、次の順序でスピーチします。
- 故人との関係と会葬へのお礼
- 故人に代わり生前のお礼
- 故人とのエピソード
- 今後のお付き合いやお力添えのお願い
葬儀・告別式は、親族の参列が中心となるため、お通夜とは違う挨拶の内容や言い回しを心掛け、とくに身内が聞きたいであろう故人のエピソードを検討しておくと良いでしょう。
告別式や出棺のときの基本的な文例
告別式が終わったタイミングでは、火葬場へ同行しない方々へのお礼を伝えるため、最後に次のようなトークを行います。
おかげさまをもちまして、葬儀・告別式を滞りなく済ませることができ、これより出棺の運びとなります。
生前はひとかたならぬご厚誼にあずかり、お見送りまでいただきまして、故人もさぞ皆様のご厚情に感謝していることと存じます。
本日はご参列いただき、誠にありがとうございました。
④精進落としの前後いずれか
精進落としの前後いずれかに喪主は最後の挨拶のスピーチを行うため、無事に葬儀を終えられたことへのお礼と、精進落としの挨拶、最後の締めくくりとして丁重にお礼を伝えます。
- 無事に葬儀を終えられたことへのお礼
- 精進落としの会食に向けての挨拶もしくはお開きの挨拶
- 締めくくりの最後のお礼の言葉
なお、一日葬においては、精進落としのタイミングで1回だけスピーチをするケースが多いため、次のような流れで挨拶をするのがおすすめです。
- 故人との関係と会葬へのお礼
- 故人に代わり生前のお礼
- 故人とのエピソード
- 今後のお付き合いやお力添えのお願い
- 締めくくりの最後のお礼の言葉
精進落としの前後いずれかの基本的な文例
精進落としの会食の席では、最後の挨拶となる締めの言葉を伝えましょう。
ささやかではございますが、精進落としのお膳をご用意いたしましたので、ごゆっくりとお召し上がりいただき、お疲れを癒していただければと思います。
本日は長い時間お付き合いいただき、誠にありがとうございました。
お疲れのところ、お付き合いいただきありがとうございました。
この辺りで終了とさせていただきたいと存じますので、足元にお気をつけてお帰りくださいませ。
この度は誠にありがとうございました。
喪主が挨拶をするそのほかのタイミング
喪主は遺族の代表者として、挨拶のスピーチ以外にも次のタイミングで挨拶をする必要があります。
- 僧侶など宗教者が到着したとき
- 弔問客や参列者が訪れたとき
そのほか、お通夜や葬儀・告別式の始まる前や、葬儀が終わったときは、葬儀社へ「宜しくお願いします」「ありがとうございました」と挨拶をしておくと良いでしょう。
僧侶が到着したとき
葬儀における僧侶への挨拶の仕方について、斎場を利用した場合の手順をご紹介しますので、どうぞ参考になさってください。
- 葬儀社へ切手盆を借りてお布施を乗せる
- 葬儀社の誘導で僧侶の控室へ案内してもらう
- 一礼して入室する
- テーブルを挟まずに畳へ正座し、「お忙しいところ、お越しいただきありがとうございます。どうぞ宜しくお願い申し上げます」とお辞儀をして挨拶をする
- お布施の向きを僧侶から見て正位置になるようにして「気持ちばかりではございますが、どうぞお納め下さい」と差し出す
- 一礼して退室する
葬儀後にお布施を渡す場合は、「本日はご丁寧なおつとめを賜りまして、誠にありがとうございました。故人もさぞ喜んでいることと思います。」といった挨拶をします。
弔問客や参列者が訪れたとき
自宅への弔問客や葬儀への参列者には、喪主や遺族は次のように挨拶をしましょう。
「お忙しいところお越しいただき、ありがとうございます。生前は、故人がたいへんお世話になりました。」
挨拶を済ませたら、普段どおりの言葉使いで構わないので、時間のある限り、喪主や遺族側から語りかけて、コミュニケーションを図りましょう。
喪主の挨拶を上手に行う5つのポイント
喪主の挨拶を上手に行うには5つのポイントがあるため、ぜひ押さえておきましょう。
- カンペを用意する
- 2〜3分程度(600〜900文字)にまとめる
- 忌み言葉を使用しない
- 宗教による言葉の選択に気をつける
- 喪主以外の遺族が挨拶をしても構わない
カンペを用意する
慣れない葬儀でのスピーチは緊張や疲労感により、思いどおり話せなくなってしまうケースがあるため、カンペの原稿を用意してポケットへ入れておくのがおすすめです。
葬儀でカンペを手にして読むことは決して悪いことではありません。挨拶のタイミングで顔を上げて、しっかりと参列者の方を見てお辞儀をすると、美しいスピーチとなります。
2〜3分程度(600〜900文字)にまとめる
聞き取りやすいスピーチでのトークは1分間あたり、300文字と言われており、葬儀での喪主の挨拶は約2〜3分のため、600〜900文字を目安にすると良いでしょう。
あらかじめ原稿を用意して、スピーチの練習しておくと、失敗を防ぎやすくなるため、喪主の方は事前に準備しておくようにしましょう。
忌み言葉を使用しない
忌み言葉(いみことば)とは、不幸を連想させる縁起の悪い言葉のことをいい、葬儀では不幸が続くことを連想させる「重ね言葉」や「繰り返し言葉」も使用してはいけません。
不幸を表す言葉
死ぬ・別れる・終わる・失う・消える・最後 など
重ね言葉
重ね重ね・たびたび・たまたま・いろいろ・わざわざ など
繰り返し言葉
再び・追って・次々と・引き続き・繰り返し など
宗教による言葉の選択に気をつける
宗教によっては、避けるべき言葉があるため、間違えやすい代表的な2つの事例をご紹介します。
- ご冥福を祈る:浄土真宗以外の仏教のみ
- 天国から見守る:キリスト教のみで仏教では「あの世」と表現する
喪主以外の遺族が挨拶をしても構わない
遺族代表の挨拶は、喪主以外の方がスピーチをしても構わないため、次のようなケースでは家族や親族と話し合って、挨拶をする方を決定しても良いでしょう。
- 喪主が高齢の方や若い方の場合
- 喪主が体調不良や憔悴して心身に支障がある場合
とくに大勢の方が参列をする葬儀では、心身が健康な方が挨拶をした方が周囲にとって安心感があるため、葬儀社へ相談して調整してください。
喪主の挨拶の文例集
葬儀の種類や故人の立場によるさまざまな喪主の挨拶の文例をご紹介します。基本的な文例と組み合わせて用途いただければと思いますので、ぜひ参考になさってください。
一般的な夫(妻)の挨拶の文例
主人(妻)は3ヶ月前に余命宣告を受け、それでも回復できると信じ、術後の帰宅を待ち侘びておりましたが、願い叶わず、〇月〇日、〇歳で逝去いたしました。
生前中は、お見舞いや励ましのお言葉をいただき、本当にどうもありがとうございました。
主人(妻)は穏やかで優しく、愛情に溢れた人柄で、自分のことよりも家族のことばかり心配して、気にかけてくれておりました。
夫として父として(妻として母として)、どれほど私や子どもたちに尽くしてくれたかを思い返すと、悲しくて言葉もありません。
きっとあの世から見守ってくれていると思いますので、主人(妻)のためにも家族一丸となり、支え合いながら前を向いて歩いてゆこうと思います。
ご心配やご迷惑をお掛けすることもあるかと存じますが、どうぞ今後とも変わらぬお付き合いを宜しくお願い申し上げます。
家族葬で老衰で親が亡くなった場合の子どもの挨拶
本日はお忙しい中、父(母)・〇〇の葬儀へご参列いただき、誠にありがとうございます。
生前中はお見舞いや心温まるお気遣いやお言葉をいただき、本当にありがとうございました。父(母)に代わりまして、心より御礼申し上げます。
父(母)は老衰により〇月〇日、最期は家族に看取られながら、享年〇歳にて天寿を全ういたしました。
ここ数年は徐々に体力が衰えつつも、子どもたちに迷惑をかけまいと、入院直前まで一人暮らしを続け、いつも明るく気丈に振る舞っておりました。
賑やかで楽しい場が大好きな父(母)でしたので、こうして人生の最後に親族の皆さまにお集まりいただき、父(母)もあの世でさぞ喜んでいることと思います。
身内だけの小さなお葬式ですので、どうぞお気を遣わず、和やかなひとときをお過ごしくださいませ。
現役で働く夫を亡くした妻の挨拶の文例
本日はご多用中のところ、夫・〇〇の通夜にご参列いただきまして、誠にありがとうございました。
皆様方にお集まりいただき、主人もさぞ喜んでいることと存じます。生前にいただきましたご厚情へも深く感謝し、故人に代わりまして、心より御礼申し上げます。
主人は癌を患い、職場の皆さまやご友人の皆さまへ多大なご迷惑とご心配をお掛けしながら、皆さまのお力添えによって一時は復職を果たせたことをたいへん喜んでおりました。
願い叶わず、再発により闘病生活を送ることとなり、家族が見守る中、〇月〇日、〇歳で生涯を閉じましたが、皆さまの温かいお言葉は、どれだけ主人の励みになったか計り知れません。
改めて御礼申し上げます。本当にどうもありがとうありがとうございました。
寂しくなりますが、主人の努力と想いを無駄にしないよう、家族一丸となって努めて参りますので、今度ともご指導ご厚誼を賜りますよう、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
母親に代わり子どもが挨拶をする場合の文例
本日はお忙しい中、父・〇〇の通夜へお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
本来なら故人の妻である母よりご挨拶申し上げるところですが、突然のことで体調を崩しておりますため、遺族を代表いたしまして、長男である私からご挨拶をさせていただきます。
健康に気を配っていた父は、現役引退後も規則正しい生活を送り、倒れてしまった当日も早起きをして、趣味のゴルフに出かけておりました。
まだ父の死を受け入れがたく、信じられない思いでいっぱいですが、医師によると急性心不全という診断で、長く苦しまずに済んだことがせめてもの救いです。
父が安心して旅立てるよう、これからは父の分まで兄妹で力を合わせて母を支えながら頑張ってゆこうと思います。
皆さまへは故人が生前賜りましたご厚情に感謝申し上げますとともに、今後ともどうぞ温かく見守っていただきますよう、心よりお願い申し上げます。
まとめ:喪主の挨拶を上手に行う5つのポイントと文例集
喪主の挨拶を上手に行うのにはコツがあるため、5つのポイントや挨拶のタイミングと回数、具体的な文例集についてご紹介しましたが、まとめると次のとおりです。
- 喪主の挨拶は、葬儀の種類や流れによって異なり、最大4回あるため、事前に葬儀社へ確認して打ち合わせておくと安心できる。
- 喪主の挨拶では、事前にカンペを用意し、2〜3分程度(600〜900文字)にまとめておくと失敗を防ぎやすい。
- 喪主の挨拶では、忌み言葉を使用せず、宗教による言葉の選択に気をつけるようにする。
- 喪主の挨拶は、喪主以外の遺族の代表者が挨拶をしても構わないため、喪主が難しい場合は、あらかじめ家族や親族と話し合って決定しておく。
北のお葬式では、北海道一円の葬儀を執り行っており、喪主様やご遺族が不安な挨拶のスピーチについてもしっかりとサポートしております。
故人様はもちろん、ご参列いただく皆さまが満足できるお葬式をお届けし、葬儀後の手続きなどのアフターフォローも万全に行っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。