葬儀の香典返しは、いつ、いくらぐらいのどんな品物をどうやって贈るべきか、よく分からない方も多いでしょう。
忙しい遺族にとって、面倒に感じる場合もあると思いますが、香典返しには注意するべきマナーがあります。
そこで本記事では、葬儀の香典返しについて、押さえるべきマナーや相場等のポイントを分かりやすく解説します。
知っておきたい基礎知識から、葬儀の香典返しに関してよくある質問まで、まとめてご紹介しますので、適切に贈り物ができるよう、ぜひご覧ください。
目次
葬儀の香典返しとは?

葬儀の香典返しについて、意味や歴史、役割と必要性について解説します。迷いやすい「会葬御礼」との違いについてもご紹介しますので、まず、基礎知識を習得しておきましょう。
香典返しの意味と歴史
香典返しとは、日本の伝統的な風習で、通夜や葬儀で香典をいただいた方に対して、感謝の気持ちを伝える返礼品のことをいいます。
香典帳が発見されたことから、起源は江戸時代に遡ると言われています。しかし、当初の香典は、金銭よりも線香・ロウソク・米・茶といった、葬儀で必要となる品物が主流でした。
出典:江戸期の香典は3文(400円)?質素な額、米や線香も 水運関係で下流域からも会葬 香典帳5冊見つかる(丹波新聞)
金銭を香典とするスタイルは、明治時代後期から昭和初期にかけて広まり、現代のような香典返しの習慣が一般的になったのは、第二次世界大戦後と言われています。
現在の香典は、「遺族の葬儀費用の負担を軽減するため」という考え方が一般的ですが、そもそも香典は『香奠』と表し、「香」は焼香や線香、「奠」は神仏への供物を意味します。
つまり、香典には、困った時に助け合う相互扶助の精神と、故人の供養をする気持ちが込められており、香典返しは、これらの温情に対するお礼の形だといえるでしょう。
香典返しの役割と必要性
葬儀で贈る香典返しには、次のような3つの役割があります。
- 香典に対する謝礼
- 社会的なマナー・習慣
- 忌明け法要を終えた報告
葬儀や法要で香典を負担してくれた方に対して、謝礼として香典返しを贈ることは、社交儀礼のマナーであり、大切にするべき日本の習慣です。
故人の分までしっかりと感謝の気持ちを伝えられるよう、香典返しは真心を込めて贈りましょう。
また、葬儀後に香典返しを贈る場合は、無事に忌明け法要を終えたことや、故人が授かった死後の戒名を報告する役割も含まれます。
香典返しを贈るタイミングや忌明けについては、次章にて詳しく解説していますので、ぜひ確認して最適な香典返しの時期を見定めてください。
香典返しと会葬御礼の違い

葬儀では、香典返しのほかに会葬御礼として品物を用意するケースがあり、意味合いが異なります。
| 項目 | 会葬御礼 | 香典返し |
| 目的 | 参列のお礼 | 香典のお礼 |
| 対象者 | 参列者全員 | 香典をいただいた方 |
| 渡す時期 | 葬儀当日 | 葬儀当日or忌明け後 |
| 品物の価格 | 500〜1,000円程度 | 地域差あり |
香典返しが香典に対する謝礼なのに対して、会葬御礼は葬儀へ参列いただいたことに対する謝礼です。
葬儀における返礼品のスタイルは、主に地域の風習によって異なり、目的が異なることに注意して、葬儀社へ確認のうえ手配しましょう。
会葬御礼品は会葬礼状を添えて、香典の有無に関わらず、500〜1,000円相当のお茶やハンカチといった同一の品物を参列者全員へ配るのが一般的です。
香典返しについては、地域や葬儀によって、返礼品を渡すタイミングや品物の価格帯が異なるため、次章にて解説します。
香典返しの金額

香典返しの金額は、次の2つのポイントを押さえておく必要があります。
- 香典返しの相場は地域によって異なる
- 香典金額は故人との関係によって異なる
香典の金額は、葬儀へ参列する方の立場によって違いがあり、香典返しにかかる総額費用は、主に葬儀の参列者の人数によって左右されることを知っておきましょう。
地域別の香典返しの相場
香典返しは、地域によって以下のように相場が異なり、全国的に香典金額の1/3〜1/2程度の香典返しを行う「半返し」が多い傾向にあります。
| 地域 | 相場 |
| 北海道 | 1,000円程度(高額の香典には追加で香典返しを行う場合がある) |
| 東北地方 | 香典金額の1/3〜1/2程度 |
| 関東地方 | 香典金額の1/3〜1/2程度 |
| 関西地方 | 香典金額の1/3〜1/2程度 |
| 九州地方 | 香典金額の1/3〜1/2程度 |
| 沖縄 | 香典金額の1/3~1/4程度 |
しかし、北海道のように低額の香典返しをする地域や、そもそも香典返しをしない地域もあります。
たとえば、群馬県・栃木県・埼玉県の一部などでは、香典金額を1,000~3,000円と低く抑える「新生活運動」により、香典返しを行わない風習が根付いています。
香典返しの相場が不明な場合は、地元の葬儀社や返礼品の専門店へ確認しましょう。
香典の相場
地域や個人の収入事情などによっても異なりますが、一般的な香典金額は以下のように故人との関係性によって幅広い金額差があります。
| 故人との関係 | 香典金額 |
| 両親 | 3〜10万円 |
| 祖父母 | 1〜5万円 |
| 兄弟姉妹 | 3〜5万円 |
| おじ・おば | 1〜3万円 |
| 友人・知人 | 5,000〜1万円 |
| 会社関係・近所 | 3,000〜1万円 |
つまり、香典返しは、多くの地域で相手の香典金額によって品物を選ぶ必要性があることを知っておきましょう。
特に、香典金額が高い親族に対しては、後々の親戚付き合いのためにも配慮する気持ちが大切です。
葬儀の香典返しを贈るタイミング

葬儀の香典返しを贈る適切なタイミングがあるため、次の2つのポイントについて解説します。
- 葬儀の香典返しを贈る時期は基本的に2回
- 葬儀の香典返しの贈り方は3通りある
葬儀の香典返しを贈る時期は基本的に2回
葬儀の香典返しを贈る時期は、「即返し(葬儀の当日)」と「後返し(忌明け後)」の2回あり、メリットやデメリットとなる特徴は、以下のとおりです。
| 名称 | 即返し(当日返し) | 後返し |
| 時期 | 葬儀の当日 | 忌明け後 |
| メリット | 手間が省ける | 香典金額や相手に合わせて品物が選べる |
| デメリット | 品物の選択肢が少ない | 手間や送料負担が生じる |
忌明けとは、仏教の場合、亡くなってから故人を偲び、身を慎む49日の「忌中」の期間を終える時期のことをいいます。
| 宗教 | 後返しの時期(忌明け後) |
| 仏教 | 四十九日法要以降 |
| 神道 | 五十日祭以降 |
| キリスト教 カトリック | 30日目の追悼ミサ以降 |
| キリスト教 プロテスタント | 1ヶ月目の召天記念日以降 |
葬儀後の香典返しは、宗教に合わせて、上記のような忌明け法要を終えたタイミングで、相手に届くように贈ります。
一般的に後返しは、葬儀後に申し込みを行い、日時指定によって、法要日の翌日に到着するよう、事前に発送するケースが多いです。
ただし、香典返しを済ませた後に香典を受け取った場合は、個別に随時、香典返しを行うのがマナーのため、後からいただいた香典への対応に漏れのないよう注意しましょう。
葬儀の香典返しの贈り方は3通りある
葬儀の香典返しの贈り方は、次の3通りがあります。
| 贈り方 | 一律返し | 香典金額に応じた品物 |
| 即返し | 〇 | △ 地域や葬儀社によって異なる |
| 後返し | ✕ | 〇 |
| 即返し+後返し | 〇 | 〇 |
即返しでは、一律で同じ品物の香典返しを行う一律返しと、カタログギフトなどによって、香典金額に応じた価格帯の商品を用意するケースがあります。
香典返しでどのような価格帯のどういった品物を選ぶかは、地域や葬儀社によって異なるため、要望があれば、利用する葬儀社へ相談しましょう。
また、一律返しによって、参列者へ同一の返礼品をお返しした際、高額の香典をいただいた方へは追加で後返しを贈ることも可能です。
全国的に半返しが多い傾向を踏まえると、一律返しだけでは、高額の香典を包んだ親族などへ失礼になる場合があるため、後返しとの併用を検討するとよいでしょう。
香典返しの最適な選び方

香典返しにおいて、マナー違反を防いで最適な品物を選べるよう、ポイントや具体的な商品をご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
香典返しの品物を選ぶ3つのポイント

香典返しに最適な品物の選び方にはコツがあるため、押さえるべき3つのポイントについて解説します。
- 香典返しに適した「消えもの」を選ぶ
- 香典返しでタブーな品物を避ける
- 相手に喜んでもらえる香典返しを選ぶ
香典返しに適した「消えもの」を選ぶ

香典返しでは、不幸を残さないという考え方に基づき、食べたり使ったりすることで、後々まで形として残らない「消えもの」がよいと言われています。
具体的には、食品や消耗品などが消えものに相当し、お通夜や葬儀・告別式の当日に渡す即返しの場合は、持ち帰りやすい軽量な品物が最適です。
香典返しでタブーな品物を避ける

香典返しでは、避けるべきタブーな品物があり、次のような品物を贈るのはマナー違反となるため気をつけましょう。
- なま物や賞味期限が短いもの
- 包丁やナイフやハサミなどの危険なもの
- 祝い事を連想させる鰹節・昆布や紅白のもの
たとえギフトとして喜ばれる品物であっても、葬儀という場面を重視して、死を連想させたり、贈った品物で万一のトラブルが起こり得る可能性がある品物は避けるべきです。
相手に喜んでもらえる香典返しを選ぶ

香典返しは相手の良心に対する返礼品のため、故人や自分の趣味や好みを押し付けることのないよう、相手に喜んでもらえる品物を選びましょう。
たとえば、お酒などのアルコール類などの嗜好品や、故人の写真や名前が刻まれた品物など、保管や廃棄に困るような品物は避けてください。
人気の香典返しギフト

香典返しでは、次のような品物が人気を集めています。具体的な商品内容についてご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
- カタログギフト
- プレミアムギフト
- 食べ比べや飲み比べの詰め合わせ
カタログギフト

相手の香典金額に合わせて選べるカタログギフトは、葬儀で持ち帰りしやすい香典返しとして、たいへん人気を集めています。
カタログギフトの最大の魅力は、贈り主ではなく、相手が自分の好みに合わせて商品を選べることにあり、幅広い商品の選択肢も人気の秘訣です。
プレミアムギフト

高級なお茶漬けなど、ワンランク上のプレミアム食品は、差し上げた方から喜ばれる人気のギフトで、香典返しでも多く利用されています。
お店へ足を運ばずにネット通販で香典返しができるケースもあるため、ネットショッピングで手配をしたい方は調べてみるとよいでしょう。
参考:久世福商店
食べ比べや飲み比べの詰め合わせ

お茶・コーヒー・お菓子・お米など、食べ比べや飲み比べのできる詰め合わせギフトは、もらった方の楽しみが膨らむ人気の返礼品となっています。
近年は、スターバックスやゴディバのアソートギフトも登場しており、お洒落な香典返しの品物を検討している方にもおすすめです。
定番の香典返し商品

昔ながらの香典返しの定番品なら、相手を選ばずに安心感があるため、オーソドックスな品物を探している方は、次のような商品がおすすめです。
- 食品ギフト
- 個包装のお菓子の詰め合わせ
- 日用品ギフト
食品ギフト

香典返しといえば、お茶や海苔が定番で、セットになった食品ギフトも全国的によく利用されています。
夏場なら素麺なども人気がありますが、食品を選ぶ際は、賞味期限が長く、保存しやすい品物が香典返しに最適です。
個包装のお菓子の詰め合わせ

個包装されたクッキーやマドレーヌなどの焼き菓子や、煎餅などの詰め合わせは、老若男女を問わず、誰からも喜んでもらえるでしょう。
お菓子の詰め合わせは、会社や団体など、複数名で香典をいただいた場合の香典返しにもおすすめです。
日用品ギフト

タオルや洗剤などの日用品ギフトは、実用性が高くて無駄にならないため、香典返しの定番品となっています。
特に今治や泉州などの国産タオルは良質で人気が高く、洗剤は洗濯用洗剤・柔軟剤・食器用洗剤などがセットになったタイプが人気です。
葬儀の香典返しのマナー

葬儀の香典返しについて、押さえるべきマナーを解説しますので、マナー違反にならないようにしっかりと確認しておきましょう。
香典返しには礼状を添えるのが基本

香典返しは、礼状を添えて贈るのが基本です。葬儀社や返礼品の専門店などへ香典返しを注文すると用意してもらえるため、必ず依頼しましょう。
礼状には種類があり、高品質な大礼紙の紙巻き礼状を封筒に入れるタイプや、カードタイプなどがあります。
専門業者では、故人や喪主の名前、戒名、日付などを印字できるため、間違いのないよう、文字をしっかりと確認してください。
香典返しの礼状の例文
香典返しの礼状では、句読点を使用しないのがマナーです。以下に具体的な例文をご紹介しますので、参考になさってください。
謹啓 先般(続柄)(故人の俗名)儀 葬儀に際しましては
鄭重なるご芳志を賜りお礼申し上げます
本日 四十九日の法要を相営むことができました
生前に故人が賜りましたご厚情に改めて感謝申し上げます
つきましては 供養のしるしに心ばかりの品をお送りいたしますのでご受納ください
略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます
謹白
(日付)
喪主 (氏名)
香典返しの表書きと水引

香典返しの表書きは、以下のように地域や宗教によって異なるため、葬儀社や専門店へ宗教を伝えて用意してもらいましょう。
| 表書き | 対象 |
| 志 | 地域や宗教を問わずに使用可 |
| 満中陰志 | 西日本を中心に用いられる |
| 偲び草 | 神式やキリスト教式の場合 |
| 水引 | 対象 |
| 黒白 | 地域や宗教を問わずに使用可 |
| 黄白 | 関西を中心に用いられる |
| 神式やキリスト教式の場合 |
香典返しの包装方法
香典返しの掛け紙は、以下のように贈り方によって異なり、郵送する際は商品の化粧箱へ内のしをしてから包装します。二重包装をしないように注意しましょう。
- 手渡しする場合:外のし
- 郵送する場合:内のし
礼状は掛け紙の内側へ挟むか、化粧箱の中へ入れるのが一般的です。
手渡しの場合は、葬儀社や販売店へ依頼して、お渡し用の紙袋を用意してもらいましょう。
葬儀の香典返しに関してよくある質問

葬儀の香典返しに関してよくある質問をご紹介しますので、気になる項目があれば、事前にチェックしておくと安心です。
消えもの以外の香典返しはダメなの?
香典返しは、消えもの以外にも、次のような品物を選ぶケースが多くあります。相手に喜ばれる商品なら、ぜひ検討しましょう。
- 食器などの陶器:死後は土に還るという意味合いから問題ない
- お盆や菓子器などの漆器:不幸を塗りつぶし、不幸がないように色直しをするという意味合いから問題ない
- 鍋やキッチン用品などの金物:光るものは魔除けになると考えられていたことから問題ない
- 布団:癒やしや安らぎといった相手への思いやりを伝えるのに適している
香典返しを手渡しで渡す場合のマナーは?
香典返しを手渡しで渡す際のマナーについて、押さえておきたいポイントをご紹介しますので、参考になさってください。
- 忌明け後、なるべく早く香典返しをする
- 死を連想させる言葉や「度々」「重ね重ね」などの『忌み言葉』を避ける
- 品物は紙袋から取り出して差し出す
- 「葬儀ではありがとうございました。お香典のお礼ですので、どうぞお納めください。」など、簡単な挨拶の言葉を伝える
供花や香典返しを辞退している方へのお礼はどうしたらいい?
供花や供物などをいただいた方への返礼品は特に必要なく、香典返しを辞退している方へは返礼品を贈らないのがマナーです。
お礼を伝えたい場合は、「葬儀に際してはご厚志を賜り誠にありがとうございました」と、手紙やはがきで伝えるとよいでしょう。
まとめ:葬儀の香典返しはマナーを守って適切な品物を贈りましょう!

葬儀の香典返しについて、基礎知識やマナーを解説しましたが、まとめると次のとおりです。
- 香典返しは日本の伝統的な風習で、宗教を問わず、葬儀で香典をいただいた方に対しては返礼品を贈るのが基本マナー。参列のお礼にあたる『会葬御礼』とは意味合いが異なる。
- 香典返しの相場は、全国的には香典金額の1/3〜1/2が多いが、地域によって異なる。香典金額は故人との関係によって差があるため、高額な香典をいただいた方へは、追加で香典返しするとよい。
- 葬儀の香典返しは、お通夜や葬儀・告別式の当日に渡す『即返し(当日返し)』と、忌明け後に届くように贈る『後返し』とがあり、どちらにするかは、地域や葬儀社によって違いがある。
- 葬儀の香典返しには、礼状を添えるのが基本マナーで、贈るタイミングは地域によって違いがあり、表書きや水引は宗教でも相違があるため、葬儀社や返礼品の専門店へ適切なものを用意してもらう。
北のお葬式は、北海道一円の葬儀を承っており、地域特有の香典返しに関して、質問やご相談を無料で承っています。
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