葬儀の喪主は誰がやるべきなのか、妻や夫・長男・次男・長女(娘しかいない場合)など、家族の状況によって悩まれる方は多くいます。また、喪主と施主の違いについても「同じ意味ではないの?」と疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、喪主を誰がやるかの優先順位と決め方を5つのステップで解説するとともに、妻・長男・次男・娘しかいないケースなどあらゆる状況別の対応策もまとめています。喪主の年齢制限の有無や、喪主が押さえるべき注意点・よくある質問まで、必要な情報を一記事で全解説します。
目次
喪主と施主の違い

喪主と施主はよく混同されますが、担う役割がまったく異なります。以下の表で違いを整理してから、それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。
| 名称 | 役割 | 現代での位置づけ |
|---|---|---|
| 喪主 | 故人側の代表として葬儀を主導する人 | ほぼすべての葬儀で必要 |
| 施主 | 葬儀・法要の費用を負担する出資者 | 一般家庭では喪主が兼任することが多い |
喪主とは
喪主とは、お通夜・葬儀・告別式といったお葬式全体において、故人側の代表として儀式を主導する役割を担う人のことです。
具体的な役割は多岐にわたります。
- 葬儀社・宗教者との打ち合わせ窓口
- 葬儀内容・戒名の有無やランクなど重要事項の決定
- 参列者への挨拶・お礼対応
- 弔問客への対応
一般的には配偶者や子どもなど故人の家族・近親者が務め、参列者が納得・満足できる葬儀を進めることが大きな使命となります。
施主とは
施主とは、葬儀や法要に必要な費用を負担し、宗教者へのお布施を支払う立場の方のことです。実務上は葬儀社との契約や喪主のサポート役を担うのが一般的です。
つまり、喪主自身が葬儀費用やお布施を支払う場合、施主は不要です。一般家庭の葬儀で施主が登場することはほとんどありません。
ただし、少ない例とはなりますが、費用負担の有無に関係なく、遺族(兄弟姉妹など)で葬儀の役割を分担するために「喪主」と「施主」を分ける場合もあります。
施主が明確に存在するのは主に社葬の場合で、「施主=会社・喪主=遺族」という形が典型的なケースです。
家族葬で施主を立てるケースは少ない
家族葬などの小規模な葬儀が増えている近年では、喪主自身が葬儀費用を負担するケースが大半です。
実際に喪主以外の身内が費用を払っていても、あえて「施主」として公にしないことも多く、葬儀に必要なのは基本的に喪主のみと考えて差し支えありません。
喪主は誰がやる?優先順位の基本ルール
喪主を誰がやるかについて、法的なルールは存在しません。
ただし、一般的に広く使われている「血縁関係による優先順位」があり、これに沿って決めると家族・親族間のトラブルを避けやすくなります。
喪主の優先順位(一般的な目安)
| 順位 | 対象 |
|---|---|
| 1位 | 配偶者(妻・夫) |
| 2位 | 子ども(長男・長女→次男・次女など、生まれた順) ※娘しかいない場合は長女が務めるのが一般的 |
| 3位 | 故人の両親 |
| 4位 | 故人の兄弟姉妹 |
| 5位 | その他の親族 |
この優先順位はあくまでも慣習的な目安です。家族・親族全員が納得していれば、どの方法で喪主を決めても問題ありません。
ケース別|喪主を誰がやるかの全パターン解説
家族構成や状況によって「喪主を誰がやるか」の答えは変わります。よくあるパターンを網羅して解説します。
妻・夫(配偶者)が喪主になる場合
配偶者が喪主を務めるのが最も一般的です。
例えば、夫が亡くなった場合、妻が喪主となるケースは全体の中で最も多く見られます。
ただし、妻が高齢・体調不良・精神的に強いショックを受けている場合は、長男や長女などの子どもが喪主を代行または共同で務める方法が選ばれることもあります。
妻が喪主となる場合、挨拶や費用の支払いなど実務面で子どもがサポートする体制を整えておくと安心でしょう。
長男が喪主になる場合
配偶者(妻・夫)が亡くなっている、または高齢・体調不良などで喪主が困難な場合、第一子が長男であれば、長男が最初に喪主候補となります。
かつては「家督相続」の考え方から長男が当然の喪主とされていました。現代でも長男が喪主を務めることへの違和感は少なく、参列者にとっても自然に映ります。
長男が遠方在住・仕事の都合・健康上の理由で喪主を務めることが難しい場合は、長女や次男など別の子どもが務めることも選択肢に含まれます。
次男が喪主になる場合
長男・長女が何らかの理由で喪主を辞退した場合や、次男が故人と同居・介護を担っていた場合は、次男が喪主を務めるケースも見られます。
「長子以外が喪主をしてはいけない」というルールはなく、故人に最も近く、貢献度が高い人が喪主を務めることは合理的な判断といえます。
子どもの間で事前に話し合い、了承を得ておくとトラブル防止になります。
長女(娘しかいない)が喪主になる場合
子どもに娘しかいない場合は、長子である長女が喪主を務めて問題ありません。
かつては「娘は嫁いでしまうから」という理由で娘が喪主を避けるケースもありましたが、現代ではその考え方は薄れており、娘が喪主を務めることは一般的になっています。
娘しかいない家庭では次のいずれかの方法が多く選ばれます。
- 長女が単独で喪主を務める
- 長女・次女など姉妹で共同喪主とする
- 配偶者(母親)が喪主を務め、娘がサポートする
娘が既婚の場合でも、実家の喪主を務めることには問題ありません。
婿(娘の夫)が喪主を務める場合は、親族間で事前合意をしておくとトラブルになりにくいでしょう。
一人っ子・子どもがいない場合
子どもが一人の場合は、その子が喪主を務めることが自然です。
子どもがいない場合は、故人の兄弟姉妹・甥姪・従兄弟などが喪主を務めるケースがあります。
身寄りがまったくない場合は、後見人・世話人・友人・または葬儀社と相談して喪主相当の役割を担う方を決めることになります。
事実婚(内縁関係)のパートナーも喪主になれる
現代では、籍を入れていない事実婚のパートナーが喪主を務めるケースも増えています。法律上の制限はないため、どなたでも喪主になることは可能です。
ただし、お葬式を円滑に進めるためには、故人の親族(血縁関係のあるご家族)と事前にしっかりと話し合い、理解を得ておくことが大切です。
孫が喪主になる場合
子どもが全員すでに亡くなっている場合など、孫が喪主を務めることも問題ありません。年齢が若くても、血縁上は合理的な選択です。
ただし未成年の場合は、成年の親族が補佐役として同席する体制を整えておくと安心です。
喪主の年齢に制限はある?
喪主に法的な年齢制限はなく、未成年でも喪主を務めることは可能です。
ただし実務上、未成年が喪主となる場合は次の点に注意が必要です。
- 葬儀費用の契約・支払いは、施主を立てる、または成年の親族(後見人など)が代行する
- 参列者への挨拶が難しい場合は、成年の親族が補佐して対応する
- 精神的・体力的な負担を考慮し、大人が十分にサポートする体制を整える
一方、高齢の配偶者が「体力的に不安」「精神的につらい」という場合は、名目上は配偶者が喪主を務め、子どもが実務を担うという形をとることも一般的です。
喪主は形式と実務を分けて考えても支障はありません。
喪主の決め方は5つの方法がある

法的な規定がない喪主の決め方には、以下の5つのアプローチがあります。
家族・親族の納得が得られればどの方法でも問題ありません。
①一般的な優先順位で決める
前述の「配偶者→子ども(生まれた順/娘しかいない場合は長女)→両親→兄弟姉妹→その他の親族」の順で決める方法です。
②故人の遺志を重視する
遺言書・エンディングノートなどに「誰に喪主をしてほしい」という希望が記されている場合は、故人の遺志を尊重するという選択方法です。
③故人への貢献度・社会性で決める
例えば、同居して介護してきた親族、または人前での挨拶や対応が得意で礼儀マナーのある人を喪主に選ぶ方法です。
④複数人で共同喪主とする
喪主は「共同喪主」の形で、複数人が葬儀の責任者として名を連ね、役割分担を行なうことも可能です。
例えば、「高齢の母と長男」「姉妹2人」など、1人に負担が集中しないというメリットがあります。
葬儀社や参列者への案内では「喪主 〇〇・〇〇」のように連名で表記します。
⑤葬儀社と相談して決める
故人に身寄りがない・どうしても喪主を決められないなどの場合は、葬儀社に相談しながら後見人・世話人・友人などが喪主相当の役割を担う方法もあります。
喪主になったら気をつけたい5つの注意点

喪主として押さえておきたい注意点を5つにまとめます。事前に把握しておくことで、葬儀当日のミスや後悔を防ぎやすくなります。
①身だしなみ・清潔感を最優先に
数珠・白ハンカチ・袱紗(ふくさ)なども忘れずに準備してください。
②宗旨宗派と作法を事前確認
令和7(2025)年12月発表の宗教年鑑(文化庁)によると、国内の仏教宗派は153あり、お焼香・お線香をはじめとする葬儀の作法は宗派によって異なります。
初めて喪主として葬儀を取り仕切るなど、作法についてよくわからないときは、お付き合いのあるお寺に事前確認しておくとよいでしょう。
あわせて、お布施の金額・戒名の有無も聞いておくと安心です。
③忌み言葉・重ね言葉を避ける
葬儀の挨拶では以下のような言葉を使わないように注意します。
- 忌み言葉: 死ぬ・失う・終わる・消える など
- 重ね言葉: いよいよ・ますます・重ね重ね・たびたび など
- 繰り返し言葉: 再び・続く・引き続き など
- 宗教の違いに注意: 「ご冥福」は浄土真宗では使わない、「天国」はキリスト教の言葉のため仏教の葬儀では避ける(「あの世」や「西方浄土」等に言い換える)など
④葬儀の流れを事前に把握する
通夜と告別式を行なう一般的な葬儀の流れは、「遺体搬送・安置 → 葬儀社との打ち合わせ → 納棺 → 通夜・通夜振る舞い→ 葬儀・告別式 → 出棺・火葬 → 繰り上げ法要・精進落し」です。
葬儀社に確認して全体の流れを頭に入れておくとスムーズでしょう。
⑤費用負担について家族・親族と事前合意する
葬儀から法要、納骨まで、まとまった費用がかかります。
費用面で心配がある場合は、家族や親族と早めに話し合っておきましょう。
【喪主が知っておきたい葬儀費用の税金に関する豆知識】
- 葬儀費用は相続財産から差し引ける(控除可能)
→お通夜や告別式の費用、お布施などは相続税の計算時に差し引けます。
なお、お布施はお寺へのお礼(謝礼)という性質上、通常は領収書が発行されないことが多いものですが、寺院によっては対応を行なってくれる場合があります。事前に確認しておきましょう。
領収書が発行されなくても、ご自身で作成したメモで相続税控除の申告が可能です。「支払った日付・金額・寺院名(宗教法人名・僧侶の名前)・支払い内訳(お布施・車代・御膳料など)」を控えておきましょう。
- 墓地や仏壇(祭祀財産)は相続税の課税対象外
→お墓や仏壇、神棚などは日常礼拝の対象として、法律で相続税がかからない「非課税財産」と定められています。
- お墓や永代供養の購入は「生前」がお得(死後の購入は控除不可)
→お墓の購入時期によって、相続税の扱いが大きく変わります。
・生前に購入(支払い済み): 現金がお墓(非課税の財産)に変わるため、節税になる
・死後に購入: 支払った費用を財産から差し引くことができず、節税にならない
亡くなった後に購入しても相続税は安くなりません。生前に代金の支払いを済ませておくことが、かしこい節税のポイントです。
- 相続税の申告は10か月以内(相続放棄の手続きは3か月以内)
→相続税の申告期限は、死亡を知った日の翌日から10か月以内です。一方、借金などを引き継がないための「相続放棄」は、死亡を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。
出典:
国税庁
No.4126 相続財産から控除できる債務
No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
No.4108 相続税がかからない財産
No.4205 相続税の申告と納税
e-Gov(法令検索)
相続税法
民法
裁判所
相続財産清算人の選任
喪主・施主に関するよくある質問
Q. 喪主は誰がやっても法律上問題ない?
A. はい、問題ありません。 喪主を誰が務めるかを規定した法律はなく、家族・親族の合意があれば誰でも喪主を務めることができます。血縁関係のない友人や知人が務めることも可能です。
Q. 長男以外が喪主になっても問題ない?
A. まったく問題ありません。 現代では家督相続の慣習はなく、次男・長女・次女・孫など誰でも喪主を務められます。重要なのは、家族・親族間で合意が取れているかどうかです。
Q. 娘しかいない場合、誰が喪主をやる?
A. 長女が喪主を務めるのが一般的です。 「娘は嫁に行くから」という考え方は現代では薄れており、長女が喪主を務めることに違和感はありません。配偶者(母親)が健在なら、母親が喪主・娘がサポートという形も多く見られます。
Q. 妻(母)が高齢で喪主が難しい場合はどうする?
A. 子どもが喪主を務めるか、共同喪主とする方法があります。 名目上は妻(母)を喪主とし、子どもが実務を担う形でも問題ありません。葬儀社に事前相談することをおすすめします。
Q. 喪主と施主は兼任できる?
A. できます。 家族葬などの小規模な葬儀では、喪主自身が葬儀費用を支払うことが多いため、施主を個別に立てるケースはほとんどありません。実質的に「喪主=施主」として、一人で進めるのが一般的です。
Q. 喪主と施主を別々にした方がいい場合は?
A. 社葬など費用負担者が明確に異なる場合です。 会社が費用を出す社葬では「施主=会社、喪主=遺族」という形が取られます。一般家庭において施主を立てるのは、ごく稀なケースとなっています。
Q. 遺族代表の挨拶は喪主以外でもできる?
A. 問題ありません。 挨拶のみ別の家族に依頼することもできます。家族葬であれば特に柔軟に対応できます。
Q. 喪主の役割はいつまで務めるの?
A. 決まりはありません。 葬儀後も四十九日・一周忌・三回忌と法要が続きますが、葬儀で喪主を務めた方がそのまま続けることが多い傾向です。法要をいつまで続けるかも含め、家族間で話し合って決めましょう。
Q. 火葬後の遺骨は喪主が所有するの?
A. 基本的には、お墓や仏壇を引き継ぐ人(祭祀主宰者)が所有します。 喪主と引き継ぐ人が違っても法律上は問題ありません。しかし、故人からの指定や遺言が特になければ、葬儀で喪主を務めた人がそのまま遺骨を引き取り、管理していくのが一般的です。
Q. 喪主のいない葬儀はできる?
A. 相談次第では可能です。 ただし、葬儀社との契約・支払いの窓口となる方が必要なため、葬儀社に理由を説明のうえ相談することをおすすめします。
まとめ|喪主は誰がやるかより「家族の合意」が大切
本記事の要点を整理します。
- 喪主と施主は役割が異なる。喪主は故人側の代表として葬儀を主導し、施主は費用負担者。基本的に一般家庭の葬儀で必要なのは喪主のみ。
- 喪主は配偶者→子(長男・長女など生まれ順)→両親→兄弟姉妹の順が一般的な優先順位だが、法的な規定はなく家族の合意があれば誰でも務められる。
- 娘しかいない・次男・孫・未成年でも喪主は務められる。年齢制限も法的にはない。
- 喪主の決め方は5つ(①優先順位②故人の遺志③貢献度④複数人で対応⑤葬儀社相談)。
- 喪主として準備すべき注意点は5つ(身だしなみ・宗旨宗派・忌み言葉・葬儀の流れ・費用相談)。
大切なのは「誰がやるか」を決めることより、家族・親族が納得できる形で故人を見送ることです。迷ったときは葬儀社に早めに相談することで、最善の答えが見つかります。
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