お通夜の日の夜、遺族が故人に付き添い、線香やロウソクの灯を絶やさずに過ごす「寝ずの番」。
家族や親戚のお通夜に参列して、寝ずの番を経験したことがある人もいると思いますが、なぜそのような習慣があるのか考えたことはあるでしょうか?
今回は寝ずの番が行われる理由と、葬儀場に宿泊する際の遺族の役割や注意点についてご説明します。
目次
寝ずの番の意義・由来
お通夜が行われた日から翌朝にかけて寝ずの番が行われる理由の一つには、死後の世界に対する仏教の考え方が関係しています。
仏教では、人は亡くなってから49日間冥土を旅すると考えられていて、この49日の間、生前の行いに対する裁きを受けることで、生まれ変わる世界が決まるとされています。
この旅の間、故人にとって唯一の食べ物が線香の煙だと言われていて、故人のお腹を満たすために線香の火を灯し続ける必要があるというわけです。
また、ロウソクの灯りと線香の香りがあの世への道標になるという考え方もあり、一人で冥土の旅をしなければならない故人が道に迷わずに旅路を進めるように願いを込めて行われるという側面もあります。
ただし浄土真宗では、亡くなった人が冥土を旅することはなく、すぐに浄土へ行くことができると考えられているため、宗教儀礼としての意味合いで寝ずの番を行う必要性はありません。
このように寝ずの番は仏教の教えをもととして行われる一方で、古くは医学的に必要とされて行われていたという説もあります。
今のように医学が発達する以前は、死亡したと思われた人が実はまだ生きていたという事例がありました。
亡くなったと思って安置していた人が意識を取り戻し、生き返ったと思われることがあったため、故人の様子に変化がないかどうか、遺族が一晩中ご遺体を見守っていたというわけです。
この他に、ドライアイスなどが無い時代に、ご遺体から出るおいを緩和するために線香を絶やさないようにしていたという説や、線香の香りに邪気を祓う効果や魔除けの効果があるとして行われていたという説もあります。
その理由や由来を知らなければ、眠い目をこすりながら故人を見守ることになんの意味があるのかわからず、「行う必要はないのでは?」と思ってしまいそうになる「寝ずの番」ですが、理由を知ると、遺族が故人を思って行う風習だということがよくわかりますね。
お葬式での泊まり、基本や現在の傾向を知ろう
葬儀ではお通夜の後、喪主や親族がそのまま葬儀場に泊まる場合があります。
葬儀場に泊まる理由は、寝ずの番を行うということの他に以下の2つがあると考えられます。
- 故人との最期の時間を過ごすため
- 親戚が遠方から参列した場合など
北海道では寝ずの番のために親族の方が泊まるスペースを設けている葬儀場がほとんどです。
お通夜の後に寝ずの番として葬儀場に泊まるのは喪主や親族が中心ですが、誰が泊まるべきと決まっているわけではありません。遠方からの方は泊まる場合が特に多いです。
近年では寝ずの番の風習は少しずつ廃れ、遺族と近い親族以外は泊まらない方も増えてきています。
ろうそく、線香を絶やさないように言われる理由や寝ずの番については、こちらでも詳しくご紹介しています。
※寝ずの番(線香番)などの風習は、地域や家によって異なる場合があります。
お葬式で泊まりになる場合、役割や注意点などの心得は?
葬儀で泊まりになる場合の役割や注意点をご紹介します。
宿泊できる人や人数の確認
葬儀場に宿泊する場合は、事前に「誰が泊まれるのか」「何人まで泊まれるのか」を喪主又は遺族に確認しておきましょう。
葬儀場によっては「遺族のみ○○人」や「家族、親族のみ○○人まで」など、故人との関係性や人数に決まりがある場合があります。
施設や設備、備品の確認
葬儀場に泊まれるといってもホテルのように宿泊設備が整っているわけではありません。
ほとんどの場合は仮眠スペースがある程度で、お風呂やシャワーが付いていなかったり、布団やタオルなどの備品がないという事も珍しくありません。
どんな設備や備品があるのか事前に確認が必要です。
布団がない場合は自宅の布団を持ち込んだり、レンタルの手配をしたりする必要があります。
※私たち「北のお葬式」では、ご家族がストレスなく一緒に宿泊できる設備を可能な限りご提供しております。
火の元に注意
葬儀場に泊まった方の役割の一つがろうそくや線香の番です。
1人が夜通し見ているのは大変ですので、複数人で交代しながら見守ると良いですね。
地域によっては消防署などからの指導で、夜間に使用して良いろうそくや線香の数が制限される場合があります。
体調に負担がかかる方はホテルへの宿泊を検討
高齢の親族の方や体調に負担がかかる方は、葬儀場に無理に泊まる必要はありません。
無理をせず近隣のホテルなどへの宿泊も検討しましょう。
土地勘のない遠方の親戚などの場合は、喪主がホテルの紹介をしてあげてください。
お通夜での服装や泊まりの際の持ち物について
葬儀場に泊まる際は、お通夜が終わった後にそのまま宿泊することになります。
翌日に困らないように服装や持ち物についてもチェックしておきましょう。
通夜の服装
遺族は正式喪服か略式喪服、親族はブラックフォーマルなどの略式喪服を身に着けます。
通夜では一般会葬者は「急いで駆け付けた」という意味で平服での参加もOKですが、遺族や親族はきちんと喪服を身に着けることが望ましいです。
そのまま葬儀場に泊まって翌日の告別式でも喪服を着用しなくてはいけないので、なおさらです。
通夜や葬儀での服装マナーについてはこちらでも詳しくご紹介しています。
泊まりの際の持ち物
葬儀場に泊まれるといってもホテルではありません。
タオルや歯ブラシなどの備品があるとは限らないので、持参した方が無難です。
持ち物を最小限に抑えたい場合は、葬儀場に事前に確認しておくと良いですね。
翌日の葬儀で必要となる数珠や香典なども忘れずに用意しましょう。
女性は予備のストッキングを持っていくと良いです。
- 仮眠時の着替え
- タオル、歯ブラシなど洗面用具
- 喪服
- 数珠
- 香典、袱紗
- 替えの黒ストッキングや靴下 など
寝ずの番をしないケースとは?
葬儀の在り方は時代の流れと共に大きく変化してきましたが、「寝ずの番」もまた例外ではないようです。
葬儀の縮小化や宗教離れが進む現在では、全ての仏式葬儀で必ずしも寝ずの番が行われているというわけではありません。
もともとは、故人の近親者が寝ずの番を行い、文字通り「夜通し」過ごしていたことを「お通夜」と称していましたが、現在では開式から3時間ほどで終了となる「半通夜」が主流となっています。
半通夜が主流となったことで、夜通し故人を見守る「寝ずの番」は必ずしも行わなければならない宗教儀礼であるという認識ではなくなったようです。
葬儀を行う場所も自宅から葬祭ホールに変わり、中には宿泊ができない施設もあります。
宿泊ができない葬祭ホールで葬儀を行う場合当然のことながら寝ずの番を行うことはできませんので、遺族は通夜が終了した後は帰宅することになります。
また、医学の進歩によって死亡診断が確実に行えるようになり、一晩中故人の様子をうかがう必要がなくなったことも、寝ずの番という風習に変化がおきた要因の一つと言えるでしょう。
家族葬で寝ずの番は行う?
「家族葬」という言葉に厳密な定義があるわけではないのですが、一般葬に比べると参列者が少ないお葬式となることがほとんどです。それに比例して、家族葬に参列する親族の人数も一般葬に比べて少なくなります。
寝ずの番は、遺族や親族が交代で故人を見守ることが一般的でしたが、家族葬の場合はそもそも参列する親族が少ないため、交代で行うことが難しいケースもあります。
また、核家族化・少子高齢化の影響で、家族葬に参列する「家族」の単位が小さくなったことも、寝ずの番を行う事を難しくしている要因の一つと言えます。
以上のような理由から、家族葬の際に寝ずの番を行うご家庭は以前に比べて減少傾向にありますが、まったく行われていないというわけではありません。
では、寝ずの番を行わなくても、ロウソクの灯や線香の煙を絶やしたくない場合はどうすれば良いのでしょうか?
現在は24時間灯るロウソクや12時間以上燃焼する渦巻き線香を使用することで、ロウソクの灯や線香の煙を絶やさないことが可能になっています。
利用を検討している斎場に事前相談を行い、そのようなロウソクや線香が準備されているかどうか確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ
故人との最期の時間をゆっくり過ごすためや、ろうそく・線香の寝ずの番をするため、遠方から葬儀に参列した親族などが通夜終了後に葬儀場に宿泊する場合があります。
遺族や親族が泊まれるようなスペースを備えている葬儀場も多いです。
しかし、宿泊できるとは言ってもホテルなどの宿泊施設とは違い、お風呂やベッドなどの設備がない場合もあるので確認が必要です。
タオルや布団などを自分で用意しないといけなかったり、泊まれる人や人数が限られている場合もあります。
葬儀場に泊まる場合には事前に宿泊可能な人や人数、必要な持ち物などを問い合わせておくと安心です。
翌日はそのまま告別式へ参列することになるため、必要な数珠や香典なども忘れずに持っていくようにしましょう。
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