日本で行われるお葬式では、ほとんどの場合火葬場でご遺体を火葬することになるため、火葬場に行ったことがある人は多いと思います。
しかし、葬儀の縮小化にともない、火葬に立ち会う機会も減少しているため、どのような流れで火葬が行われるのかわからないという方も増えているのではないでしょうか。
今回は火葬に関するマナーや必要な手続きについて詳しくご説明します。
目次
火葬とは?
火葬とは何か
火葬は遺体を焼却する葬法で、現在の日本ではほとんどのご遺体が火葬を経て埋葬されています。日本では遺体を棺に納めて火葬した後、残った骨を骨壷に納めます。
葬法には火葬の他に、遺体を土中に埋葬する「土葬」、川や海に流す「水葬」などがあり、世界ではさまざまな葬法が行われています。
日本で火葬が主流となった理由
現在の日本では火葬が主流となっていますが、昔は土葬が一般的でした。土葬が主流だった時代は、貴族など身分の高い一部の人だけが火葬を行っていました。
1900年には30%程度だった火葬率が2017年には99.9%となり、日本ではほとんどの遺体を火葬するようになりましたが、その理由の一つとしてあげられるのが「土葬用墓地の不足」です。
土葬を行う場合、衛生的な理由から広い墓地が必要となり、特に都市部ではその確保が難しいことが、日本で火葬が広がった主な要因といえるでしょう。
また、日本では「無宗教」を自認している人が多く、葬法に対するこだわりが薄いということも、火葬が定着した要因だと考えられます。
火葬率と宗教には因果関係があると考えられていて、厳格なカトリック信者が多い国では火葬率が低く(イタリア約18%・フランス約30%)、プロテスタントが多い国では火葬率も高い傾向にあります(イギリス75%)。
ほとんどの遺体が火葬される現在の日本でも法律上は土葬が認められています。ですが、条例で禁止している自治体が多いことから、土葬される遺体はごく一部となっています。
骨葬となるケースはあるの?
遺体を火葬してお骨の状態にしてから行う葬儀を骨葬(こつそう)と呼びます。
一般的な日本のお葬式は「通夜→葬儀→告別式→火葬」という流れですが、骨葬は「通夜→火葬→葬儀→告別式」もしくは「火葬→通夜→葬儀→告別式」という流れで行われます。
骨葬が行われるのはどのようなケースかというと、死後、時間が経過してから遺体が発見され、状態がよく無い場合や、亡くなった場所と葬儀を行う場所が離れている場合などがあげられます。
また、北海道の函館や東北地方、九州の一部の地域では骨葬が行われることが多いようです。
函館で骨葬が一般的となった要因には諸説あり、1934年の函館大火で多数の人が犠牲となり、急いで火葬を行う必要があったことなどがその理由ではないかと言われています。
火葬を行うタイミングとは?
法律で定められた感染症で死亡した場合をのぞき、死亡が確認されてから最低でも24時間以上が経過しなければ遺体を火葬することはできません。
その理由は、「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年5月31日法律第48号)の第3条で、「埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後24時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。」とされているからです。
この法律が制定された頃の日本は今ほど医療が発達していなかったので、仮死状態の人を死亡と診断し、火葬してしまうことを防ぐためにこのような法律が制定されたと考えられます。
火葬の流れ
葬儀形式により異なりますが、一般的には葬儀・告別式が終了した後出棺となり、火葬場に移動します。出棺後、以下の流れで火葬が終了します。
①出棺後火葬場へ移動
葬儀終了後出棺し火葬場に移動します。火葬場には、遺族や親族といった故人と近しい間柄の方が同行することが一般的です。
ご遺体と葬儀業者が乗った霊柩車を先頭とし、続く車には位牌や遺影を持つ遺族が乗って移動します。
北のお葬式対応エリアである北海道では、霊柩車ではなく霊柩バスを利用することも多く、その場合、ご遺体もご遺族も一台のバスに乗って移動します。
ご遺体をバスに納めることに抵抗がある方は、事前に霊柩車の利用を希望することを葬儀社に伝えた方が良いでしょう。
②火葬許可証の提出
火葬場に到着したら、事務室に火葬許可証を提出します。提出した火葬許可証は、火葬終了後に火葬済証明印が押され埋葬許可証となります。
埋葬許可証は納骨の際に必要となりますので、紛失したり、保管場所を忘れたりしないよう、しっかり保管しましょう。
③読経・焼香
告別室や火葬炉の前に位牌や遺影を飾り、焼香と僧侶による読経が行われます。近年では僧呂が火葬場に同行せずに、葬儀式場で読経を済ませる場合も多くなっています。
火葬が開始された後は、ロビーや特別控室などで火葬が終了するまで待機します。火葬が終了すると館内放送で収骨の案内が流れますので、その指示に従って収骨室に移動します。
④収骨
収骨室で収骨を行います。故人と関係が深い人から順に行い、2人1組で箸を使って遺骨を拾って骨壷に収めます。
これは、故人をこの世からあの世へ橋渡しするという意味があるとも言われています。
お骨の残り方はご遺体によって異なり、骨粗鬆症などで骨があまり残らない場合もあれば、しっかり残る場合もあります。大きい骨が残った場合、お骨を砕きながら収骨を行います。
収骨の方法は地域により違いがあり、一般的に東日本では全ての遺骨を骨壷に収める「全収骨」が行われ、西日本では一部の遺骨を骨壷に収める「部分収骨」が行われます。
全収骨の場合、足の骨から頭蓋骨に向かって順番に収骨し、故人と最も関係が深い人が最後に喉仏の骨を納め、収骨が終了します。
骨壷の底に足の骨が納められ、頭に向かって順番に納めていき、骨壷の中で故人が立っている状態で納められます。
部分収骨の場合も、足の骨から頭蓋骨に向かって順番に収骨しますが、全てのお骨を拾わずに、各部位のお骨を少しずつ収骨します。拾わずに遺したお骨は、火葬場で供養します。
全収骨と部分収骨では使用される骨壷のサイズも異なります。全収骨では7寸程度、部分収骨では5寸程度のサイズの骨壷が用いられます。
火葬の時間
火葬にかかる時間の目安
故人の年齢や体型、棺の種類、施設の設備によって火葬にかかる時間は異なりますが、収骨終了までを含めて概ね1時間半から2時間ほどとなります。
火葬後の遺骨の冷却を機械で行う施設と自然冷却する施設があり、自然冷却する施設に比べて機械で冷却する施設は短時間で終了します。
ちなみに、札幌市の火葬場では機械を使ってお骨を冷却し、隣接する石狩市の火葬場では自然冷却となっています。
火葬の待ち時間の過ごし方
ご遺体の火葬が終了して収骨がはじまるまで、1時間から1時間半ほどの間、遺族は火葬場で待機します。火葬場ではどのように過ごせば良いのでしょうか。
控室で過ごす
施設によっては使用料がかかりますが、控室を利用して火葬終了まで待機することが可能です。
北のお葬式対応エリアの札幌市の火葬場の場合、特別控室1室23,000円の利用料がかかります。
控室で待機する場合、控室の中で昼食をとることも可能です。地域によってはこの時に精進落としの食事が振る舞われることもあるようです。
ロビーで過ごす
ロビーがある火葬場ではロビーで待機することも可能です。その場合、昼食は食堂や喫茶室を利用します。
札幌市の里塚斎場には喫茶コーナー、そば・うどんコーナー、売店があり、同じく札幌市の山口斎場には喫茶コーナーと売店があります。
火葬後の骨壺の保管方法
ご遺骨を納めて持ち帰った骨壷は、納骨までの間自宅で保管します。多くの場合、葬儀社が設置する後飾り祭壇に、遺影や位牌などと一緒に安置します。
仏式葬儀の場合、多くの人が四十九日法要に併せて納骨を行いますが、納骨の時期に明確な決まりがあるわけではありません。
近年は海洋散骨などを選択し、お骨を納骨しないケースも少しずつ増えていますが、その場合も散骨までの間は自宅で保管します。
また、お墓や納骨堂に納骨したり散骨したりせず、自宅で遺骨を保管し続けることも可能です。
その場合、骨壷のまま保管することもできますが、場所をとることやカビが生えることが心配でしたら、業者に依頼してお骨を粉骨し、真空パックにして保管することも可能です。
火葬するときの注意点
火葬の際、故人の愛用品や好物などの副葬品を棺に納めて、故人とともに火葬することが可能ですが、何を入れても良いというわけではありません。
例えば、愛用していたメガネなどは入れてあげたくなりますが、これは入れてはいけないものとされている火葬場もあります。
施設により制限される副葬品は異なりますが、北のお葬式対応エリアである札幌市の火葬場では、以下のものは棺に入れないよう制限されています。
- プラスチック・ビニール製品
例)ハンドバック、靴、ゴルフボール、おもちゃ、人形、CDなど
- 化学繊維製品、カーボン製品
例)洋服、寝具、ゴルフクラブ、テニスラケット、釣竿など
ガラス製品
例)ビン類、めがねなど
- 硬貨
- 貴金属製品
例)宝石、金、プラチナ、腕時計など
- 燃えにくいもの
例)水分の多い果物(西瓜、メロンなど)やカニなどの魚介類、書籍(辞書、アルバム、厚い雑誌・マンガなど)、繊維製品(衣類、ぬいぐるみなど)
- 危険物
例)スマートフォン、携帯電話、スプレー缶、ガスライター、電池など
故人がペースメーカーをご使用されていた場合には、火葬受付時にお申し出ください。
なお、義手、義足等はなるべく外して下さい。
出典:札幌市公式ホームページ「斎場利用のご案内」
この他に、燃焼の妨げとなるドライアイスは火葬前に取り除くことを明示している施設もあります。
また、火葬場で制限されているわけではありませんが、生きている人が映った写真を棺に入れると「あの世に連れていかれる」などという考えから嫌がる人もいます。
家族写真などを入れる際には、周囲の人と話し合うことをおすすめします。
火葬に関する知っておくべきマナー
火葬には、遺族や親族など、故人とごく近しい間柄の人が立ち会うことになります。
一般会葬者は同行しませんが、火葬場でも守らなければいけないマナーがありますので、ここではそういったマナーについてご紹介します。
火葬場に向かう前の挨拶の仕方
葬儀、告別式が終了し出棺する際に、喪主が参列者に対して挨拶を行う場合があります。ここでは一般的な挨拶の例文をご紹介します。
例文
本日はお忙しいところ、父◯◯◯◯の葬儀にお集まりいただきまして、まことにありがとうございました。
父は一昨年より膵臓を患い、闘病を続けてまいりましたが、一昨日◯時◯分永眠いたしました。享年75歳でした。
長く自営業を営み、亡くなるぎりぎりまで仕事を続けられたことは、ひとえに皆様のご厚情のおかげと深く感謝いたしております。
私たち遺族に対しても、今後とも変わりなくご厚誼賜りますようお願い申し上げます。本日はごていねいなお見送りをいただきまして、ありがとうございました。
火葬場での心づけの渡し方
地域により異なりますが、葬儀でお世話になった方にお礼としてお金を包んで渡す場合があります。
火葬場では火葬場係員や控室のスタッフ、霊柩車や送迎バスの運転手などに心づけを渡します。あらかじめ、不祝儀袋や白い無地の封筒に包んで用意しておきましょう。
ただし、心づけを渡すのは民営の火葬場のスタッフに限ります。公営の火葬場のスタッフは公務員ですから、心づけを渡すことはできません。
公務員が心づけを受け取った場合、収賄罪にあたる可能性がありますので注意が必要です。
また、民営であっても心づけを受け取らない方針の火葬場もあるようなので、断られた場合、無理に渡さないようにしましょう。
火葬場での服装
一般的に男性はブラックスーツ(略礼服)を着用します。ワイシャツは白無地、ネクタイ・靴下は黒無地、靴は黒の革靴または合皮の靴(金具が目立たないもの)を着用します。
爬虫類の皮や型押しは避けましょう。他人の目につくものではありませんが、ベルトも黒のシンプルなものを使用することが望ましいでしょう。
コートを着用する場合も無地の黒がベストですが、グレーや紺色など濃い色のコートであれば許容範囲内でしょう。毛皮や皮のコート、フェイクファーはマナー違反です。
女性はブラックフォーマル(衿の詰まったデザインを選び、透ける素材や光る素材は避ける)又は、黒無地のワンピース、黒無地のスーツを着用します。
バッグも黒を選び、皮製は避けて布製のものを使用します。ストッキングは肌色ではなく黒を着用しましょう。
靴は装飾の無い黒のパンプスを選び、ヒールが高すぎるものや低すぎるものは避けます。また、ピンヒールではなく太めのヒールを選びます。
コートを着用する場合、黒無地がベストですが、濃いグレーやこげ茶なども許容範囲内でしょう。毛皮や皮のコート、フェイクファーはマナー違反です。
アクセサリーは一連のパール・結婚指輪は身につけても問題ありません。
火葬を行う際に行う手続きと費用
火葬許可証がないとき(取得方法)
火葬を行う際には「火葬許可証」が必要となります。
火葬許可証とはご遺体を火葬することを許可する証明証で、地域によって異なりますが、死亡届と併せて「火葬許可申請書」を故人の本籍地もしくは居住地の市区町村役場に提出することで発行されることが一般的です。
北のお葬式対応エリアの札幌市では、火葬許可申請証を提出する必要はなく、死亡届を提出することで火葬許可申請証が発行されます。
夜間や休日も死亡届を受理していますが、火葬許可証の発行は平日8時45分から17時15分の間に提出した場合に限られているため注意が必要となります。
火葬許可申請書には、故人の氏名、本籍地、住所、生年月日、死亡日、死亡場所、死因などを記入して提出します。
火葬許可証を取得するための費用は自治体により異なります。葬儀社によっては死亡届の提出と火葬許可証の取得を代行している場合もあります。
火葬許可証がなければ火葬を受け付けてもらうことができませんので、葬儀の前に必ず手続きをする必要があります。
火葬後、火葬が終了した日時が記入され、火葬場の印鑑が押された火葬許可証が返却されます。
これは埋葬許可証でもあり、遺骨を納骨する際に必要となりますので、紛失したり、保管場所を忘れたりしないようにしっかり管理しましょう。
火葬に必要な費用
火葬場には公営のものと民営のものがあり、公営に比べ民営は料金が高い施設が多いようです。また、公営の火葬場も、施設によって火葬炉の利用料金が異なります。
北のお葬式対応エリアである札幌市とその近郊の公営の火葬場で遺体を火葬する場合、火葬炉の使用料は以下の通りです。
- 札幌市 12歳以上49,000円 札幌市に住民票がある人は無料
- 小樽市 12歳以上28,000円 小樽市に住民票がある人は11,000円
- 石狩市 13歳以上35,000円 石狩市に住民票がある人は5,000円
- 北広島市 15歳以上28,000円 北広島市に住民票がある人は8,000円
また、火葬場で控室を利用する場合は別途料金を支払う必要があります。
控室の利用料金は以下となります。
- 札幌市 一律23,000円
- 小樽市 小樽市に住民票がある人 8,000円 その他の人 27,000円
- 石狩市 一律2,060円
- 北広島市 火葬炉の利用料に含まれているため別途料金は不要
火葬に関するQ&A
火葬が行われる時間帯は?
一般的に火葬は午前中に行われますが、多くの火葬場は午前中は混雑する傾向にあります。
札幌市の火葬場は、受付時間が9時30分から15時までとなっていますが、多くの葬儀式場では10時から11時頃に告別式が終了し、その後火葬場に移動して火葬が行われることが多いです。
葬儀式場と火葬場の距離によって異なりますが、火葬場で受付をするのが10時30分から12時頃となります。
札幌市近郊の北広島市の火葬場は、午前9時から受け入れを開始し午後2時30分終了、石狩市では午前9時から午後3時までが受付時間となっています。
火葬中に外出はできる?
北のお葬式対応エリアである札幌市近郊では、火葬中に外出し、火葬が終了するまでに火葬場に戻る人もいるようです。
といっても、火葬が終了した時点で火葬場に遺族がいないという状態では収骨ができず、火葬場や他の利用者に迷惑がかかりますので、特に事情が無い限り、火葬中は火葬場で待機することが望ましいと言えるでしょう。
必ず火葬にしなくてはいけないの?
現在日本ではご遺体の99.99%が火葬されていますが、法律で絶対に火葬しなければならないと決められているわけではありません。
ですが、条例で土葬を禁止している自治体がある他、墓地の管理者が土葬を禁止している場合が多いため、土葬を行うことは難しいと言わざるを得ません。
といっても、ご遺体の100%が火葬されているわけではありませんから、中には土葬可能な墓地も存在するようです。