今では誰もが聞いたことがある「家族葬」という言葉。近所に専用ホールがあったりテレビでCMが放映されていたりと、身近で見聞きする機会が多く、馴染み深い言葉になっているのではないでしょうか。
ですが、いざ家族葬がどんなお葬式なのかと聞かれると、「家族葬なんだから家族だけのお葬式でしょう」「親戚も参列するんでしょう?」「友達は呼べないのかな」などなど、色々な意見が出てくるでしょう。
今回は家族葬の定義やメリット・デメリット、費用の相場や服装マナーなど、家族葬に関する疑問にお答えできるよう詳しく解説していきます。
家族葬とは
家族葬という言葉に厳密な定義があるわけではありません。家族だけが参列する葬儀も家族葬ですし、家族の他に親族を招く葬儀も家族葬と呼ばれます。中には、故人と親しかった友人を招く家族葬もあります。
このように、家族葬において参列者の範囲にはっきりとした決まりがあるわけではありませんが、多くの家族葬では、事前に新聞のお悔やみ欄に掲載するなどして広くお知らせせずに、遺族が直接連絡をした人だけが参列するという傾向が見られます。
家族葬が増加している背景
家族葬と呼ばれる葬儀が行われるようになってから現在まで、20年ほどの年月が経ちました。家族葬が一過性のブームにとどまらず、新しい葬儀の形として定着した理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
その主な理由として、「心置きなくお別れができる」「経済的な不安がある」「高齢化した社会の影響」「人付き合いの変化」が考えられます。それぞれの理由について、以下で見ていきましょう。
心置きなくお別れができる
家族や親戚だけでなく、近所の人や友人、仕事関係者など大勢の参列者がある一般葬では、遺族が参列者の対応に追われ、故人とゆっくりお別れする時間が取れないということも少なくありません。
参列者が限られる家族葬では参列者への対応が少ない場合が多く、故人との時間をゆっくり過ごすことができます。
経済的な不安がある
現在の日本では、経済的な不安を抱えていない人を探す方が難しいと思えるほど経済が停滞し、老後の生活に対しても不安を感じる人が多いのでは無いでしょうか。
そのような状況下で、バブル経済が崩壊する以前のように葬儀費用をかけることに抵抗を覚えるのは当然のことかもしれません。
高齢化した社会の影響
高齢化社会では亡くなる人の年齢が高いため、友人や知人が葬儀に参列できる状態では無いというケースが多くみられ、「葬儀に参列できる人がいない」という理由から、結果的に家族葬を選択するご家庭も増えています。
人付き合いの変化
40代以降の世代が実感しているように、以前に比べ近所付き合い、親戚付き合いをわずらわしく感じる人が増え、そのような繋がりを重要視しなくなった結果、家族葬が増えているという側面もあるでしょう。
家族葬の範囲について
前項でもご説明したように、家族葬の参列者について厳密な定義はありません。
「同居家族のみで行う」「家族と、親しい親族だけで行う」「家族と親族で行う」「家族、親族、友人で行う」など、一口に家族葬と言ってもさまざまな形があり、その自由度の高さも魅力の一つと言えるかもしれません。
ですが、参列者についての決まりがないことで、お声がけする範囲について迷うご家庭も少なくありません。
漠然と「家族葬にしよう」と思っていると、いざ葬儀をむかえた時に誰に声をかければ良いのかわからず、家族の意見が合わないという可能性もあるため、招く範囲を事前に相談しておくことをおすすめします。
家族葬のメリット・デメリット
家族葬という葬儀形式はすっかり定着しましたが、どんなご家庭にもおすすめできるかと言えば決してそうではありません。
置かれている状況により、一般葬が適している場合もあれば家族葬が適している場合もあるため、ここでご紹介するメリットとデメリットを比較して、ご自身の状況により適した葬儀形式を考えてみてはいかがでしょうか。
家族葬のメリット
家族葬のメリットについてご紹介します。
最期の時間をゆっくり過ごすことができる
一般葬のようにたくさんの参列者が訪れる葬儀では、その対応に多くの時間を割くことになります。
参列者が少ない家族葬では、そのような参列者への対応が軽減されるため、故人との最期の時間を、心置きなくゆっくりと過ごすことができます。
葬儀費用の予想がしやすい
一般葬では事前に参列者数を予想することが難しい傾向にあります。
そのため、参列人数によって上下する葬儀費用を予測することも難しくなります。家族葬では事前にお招きする方を決められるため参列人数の予想がしやすく、葬儀費用の見通しも立てやすいと言えます。
形式にとらわれない葬儀を実現しやすい
葬儀に対する考え方が多様化した現在は、従来の葬儀形式にこだわりのある人もいれば無い人もいます。
そのような状況ですから、多くの人が参列する一般葬では従来の形式に則った葬儀を行う方が無難ですが、ごく親しい人だけが参列する家族葬では、形式にとらわれず、自由な形の葬儀を行うことが可能です。
宗教儀礼を行わない無宗教葬や、音楽を奏でて別れを惜しむ音楽葬など、従来の形式にとらわれない葬儀は、一般葬よりも家族葬に向いていると言えるでしょう。
家族葬のデメリット
家族葬のデメリットについてご紹介します。
自宅に弔問客が訪れる可能性が高くなる
家族葬を行った場合、葬儀に参列できなかった人が、後日自宅に弔問に訪れることがあります。
家族葬にすることで心置きなくお別れができたとしても、その後頻繁に弔問客が訪れる状況になってしまうと家族が疲弊してしまうことも考えられるので、交友関係が広い方や現役で仕事をしている方が亡くなった場合などは注意が必要になります。
自己負担額が大きくなる場合がある
小規模な葬儀となることが多い家族葬は、一般葬に比べてお香典も少ない場合が多く、喪主や施主の出費が増える可能性があります。
「家族葬=葬儀費用が抑えられる」と認識していても、実際には自己負担額が大きくなる場合があるので、事前相談などを行って費用を確認することをおすすめします。
家族葬の流れ
家族葬はどのような手順で行われるのでしょうか。
家族が亡くなり動揺している時、なんとなくでも葬儀の流れが頭に入っていると不安が少なくなると思います。ここではご臨終から葬儀終了までの流れをご説明します。
STEP 1.ご臨終
病院や施設で亡くなった場合葬儀社に連絡して、自宅や安置場所への搬送の時間を打ち合わせます。
事前に決まっている葬儀社があれば、搬送もその葬儀社に依頼しましょう。
別の葬儀社に搬送だけを依頼すると、費用が割高となる場合があるので注意が必要です。死亡診断書を受け取り、支払いなどの説明を受けてから病院や施設を出発します。
自宅で亡くなり搬送の必要がない場合も、まずは葬儀社に連絡しましょう。
STEP 2.ご安置
ご遺体を自宅に安置する場合は、安置用の敷布団を用意します(ベッドでも可)。葬儀社が枕飾りを用意し、ご遺体に保冷剤をあてます。
近年、住宅事情や近隣住民への配慮から自宅に安置せず、葬儀場や安置所に安置するケースも増えています。
自宅以外の場所での安置を希望する場合は、事前に葬儀場への安置や遺族の付き添い・宿泊が可能かどうか確認しておきましょう。
安置所を利用すると別途料金がかかる場合があるため、費用についても確認しておくと良いでしょう。
安置後は葬儀に参列いただく予定の親族や、葬儀で宗教儀礼を行う宗教者に連絡を取ります。
宗教者の都合を確認して、葬儀日程を検討します。菩提寺などお付き合いのある宗教者が無ければ、葬儀社に紹介を依頼することも可能です。
STEP 3.打合せ
葬儀内容について葬儀社スタッフと打合せを行います。葬儀を依頼する葬儀社から事前に見積書をとっている場合は、それを提示しましょう。
スタッフと相談しながら式場、日程、プラン、遺影、香典返し、通夜振る舞いなどについて検討し、見積書を作成してもらいます。
作成された見積書をしっかり確認した上で内容を決定しましょう。
併せて、死亡届の記入を行います。死亡届は、故人の死亡地又は本籍地、もしくは届出人の所在地の市役所、区役所、町村役場のいずれかに提出します。
葬儀プランに死亡届の提出代行が含まれている場合、葬儀社スタッフに死亡届を渡し、役所に提出してもらいましょう。
提出代行に別料金がかかる葬儀社もあるため、事前に確認することをおすすめします。
STEP 4.お通夜
北のお葬式対応エリアにおける一般的なお通夜のスケジュールは次のとおりです。
- 14:30 ご自宅または葬儀会場にて湯灌・納棺
- 15:00 自宅出発
- 15:30 式場に到着
- 16:00 受付開始・式の準備・供花の並び順を決める
- 17:30 式場内着席
- 18:00 通夜開式
- 19:00 通夜閉式
- 19:15 親族にて集合写真撮影
- 19:30 親族食事
- 20:00 告別式の打ち合わせ
STEP 5.告別式
北のお葬式対応エリアにおける一般的な告別式のスケジュールは次のとおりです。
- 7:30 朝食
- 9:30 式場内着席
- 10:00 告別式開式
- 11:00 告別式閉式・最期のお別れ・出棺
- 11:30 火葬場到着・昼食
- 13:30 火葬場にて拾骨
- 14:00 火葬場出発
- 14:30 式場到着
- 15:00 繰上げ法要開式
- 15:30 繰上げ法要閉式
- 16:00 親族解散
葬儀終了後、自宅にご遺骨を安置するための仮祭壇を設置します。
ご遺骨を埋葬する日、あるいは四十九日の忌明けまで、ご遺骨を祭壇に安置します。基本的に仮祭壇は仏壇と同じ向きに設置します。
STEP 6.葬儀後
家族葬にお招きしなかった方で、葬儀終了のお知らせが必要な関係性のご親戚などに、家族葬を終えた報告のはがきを送ります。
北のお葬式対応エリアの北海道では葬儀終了後2週間程度、本州では四十九日の法要を終えた後を目安に送りましょう。
家族葬の費用相場や香典について
家族葬の費用相場や、香典の金額について解説します。
家族葬の費用相場
鎌倉新書が2020年に発表した【第4回お葬式に関する全国調査】によると、家族葬の葬儀費用の平均は96万4,133円(式場使用料・火葬場使用料を含む、ただし飲食・返礼品費用とお布施は除く。)となっています。
北のお葬式では70~120万円ほど(お布施は除く)で行われる家族葬が多く、一口に家族葬と言っても、参列人数や利用プランにより費用は大きく異なります。
家族葬は参列者の人数を予想しやすく、事前に見積書を作成することで費用も予測しやすいため、不安がある方は事前相談をされることをおすすめします。
香典辞退も可能
家族葬を選ぶ理由の一つに、「故人との最後の時間をゆっくり過ごしたい」というご家族の気持ちがあるでしょう。
一般的に葬儀では参列者から香典をいただきますが、香典の受領や返礼品の用意などにかかる時間をなくして、故人と過ごす時間にあてることを希望するご家族もいるため、家族葬では香典を辞退するケースがあります。
このようなケースの他にもご家庭の事情などで香典を辞退したいという場合は、事前に「故人の意思により、香典はお断り申し上げます」などとして、香典辞退の意思をお伝えすると良いでしょう。
香典をお断りしても、中にはどうしてもお渡ししたいという方もいると思いますが、そのような場合はお気持ちとして受け取り、香典返しをお渡ししてください。
家族葬での服装マナー
家族葬に参列する際の服装は、一般葬に参列する際の服装と変わりません。男性と女性それぞれの服装マナーを以下にご紹介します。
男性の服装
ブラックフォーマル(礼服)、白無地のシャツ、黒いネクタイ、黒い靴下を着用してください。
靴は黒で光沢のないストレートチップやプレーントゥを選びます。穴飾りのあるウィングチップやローファー、金具のついている革靴はマナー違反とされています。
黒いビジネススーツはブラックフォーマルではないので、礼服用のスーツを身に着けましょう。
女性の服装
男性と同じく女性もブラックフォーマル(礼服)を着用します。
黒無地のワンピース、アンサンブル、スーツなどで、肌の露出が少ないものを選ぶことがポイントです。
ブラウスを着用する場合、光沢のある素材やフリル、透ける素材を使ったものは避けましょう。
靴は黒で光沢が無く、ヒールの高さが3センチ程度のものが適しています。ミュールやサンダル、スエードなど、カジュアルなものはマナー違反です。
結婚指輪や真珠の一連ネックレスは身に付けられますが、その他のアクセサリーは身に付けない方が良いでしょう。
家族葬で葬儀社を選ぶポイントは?
葬儀は商品のように価格比較をすることが難しいサービスです。
家族葬を行う上で、ネームバリューだけで葬儀社を決めてしまい、希望していた葬儀とかけ離れてしまったというケースも見受けられます。
より良い葬儀社を選択するためには、以下の点に注意する必要があります。
1 見積書を提示しない、説明しない葬儀社
葬儀をする上で事前の見積りは大切な準備の1つです。
見積りを依頼しているにも関わらず「カタログしか提示しない」「曖昧な表現しかしない」「金額が記載したものを持ち帰らせない」といった葬儀社には注意が必要です。
2 必要以上に会員入会を勧めてくる積立型や保険型の葬儀会社
必要以上に会員入会を勧めてくる積立型・保険型の葬儀社は、入会による月々の収入を目的としている場合があります。
満足できる品質の葬儀が行えるかどうか、見極める必要があると言えるでしょう。
3 大幅な値引きを行う葬儀社や極端に安い葬儀社
大幅な値引きを行う葬儀社は、もともとの価格が適正ではない可能性があります。
また、あまりにも安過ぎるプランや見積りには、葬儀に必要なものが含まれていない場合があります。
見積りやプランに含まれているもの、含まれていないものは一般消費者にはわかりづらく、必ず発生する搬送料金や保冷剤などをプランから除外している場合もあるので確認が必要です。
上記の点に注意することはもちろん、利用する葬儀社が信頼に値するかどうか判断するためにも、事前に見学や相談をすることが大切です。
まとめ
家族葬には厳密な定義があるわけではありません。同居家族だけが参列する葬儀も家族葬ですし、家族の他に親族を招く葬儀も家族葬と呼ばれます。
故人と親しかった友人や知人が参列する場合もあります。
家族葬には、「気心の知れた参列者だけで、故人と最期の時間を過ごすことができる」「形式にとらわれない葬儀を行いやすい」「費用を予想しやすい」などのメリットがある一方で、「葬儀後の自宅弔問が増える」「自己負担額が多くなる場合がある」といったデメリットもあります。
満足できる家族葬を行うためには、事前の見学や葬儀相談を経て、信頼できる葬儀社を選ぶことが大切です。